長期にわたり大量のステロイド剤投与を受けている症例(ステロイド投与群)の開腹手術時の内分泌反応について,ほぼ同等の手術を受けステロイド投与歴のない症例(コントロール群)を対照に検討した.平均血圧において両群間に差はみられなかった.しかし,ステロイド投与群はコントロール群に比し,術中頻拍かつ低血糖の傾向を示すほか,血漿ACTH濃度は両群ともほぼ同程度の上昇亢進をきたしたもののコルチゾール濃度の上昇度はステロイド投与群では小さかった.また,術前施行したrapid ACTH試験の低反応症例では術中ACTHは過剰分泌されたのに反しコルチゾール分泌亢進は全くみられなかった.以上より,長期大量ステロイド投与症例では術前のrapid ACTH試験は副腎皮質機能の予備能をよく反映し,必須の検査項目であることを再認した.