抄録
気管支腹腔瘻は非常にまれな病態である.今回,人工呼吸管理により,右横隔膜下にfree airの貯留を認めた気管支腹腔瘻の症例を経験した.患者は55歳の男性,イレウス症状のため小腸癒着剥離術を施行した.術後ショック状態となり人工呼吸管理を開始したが,開始直後の胸部X線写真で右横隔膜下にfree airの貯留を認めたため緊急開腹術を施行した.術中に人工呼吸に同期したair leakと術後に気管支ファイバーで腹腔内洗浄液のポビドンヨード生理食塩液の流出が観察されたため,気管支腹腔瘻の存在が明らかとなった.陽圧換気により腹腔内にfree airの貯留を認めたときには,気管支腹腔瘻の存在も念頭におく必要がある.