日本臨床細胞学会雑誌
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症例
腹式子宮全摘術後に発生した卵管脱の 1 例
刑部 光正鈴木 郁美國井 徹狩野 正昭阿部 光展柳川 直樹緒形 真也田村 元
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2014 年 53 巻 6 号 p. 503-506

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抄録
背景 : 子宮摘出後の腟断端卵管脱は, 子宮摘出後に発生するまれな合併症である. その細胞像は成熟扁平上皮細胞と多数の炎症細胞を背景に, 卵管上皮由来と推定される好中球浸潤などの炎症細胞浸潤を伴う低円柱状細胞からなる細胞集塊が出現するとされているが, 線毛上皮がほとんどみられないことが細胞診断を困難としている原因と考えられる.
症例 : 症例は 38 歳の女性で, 子宮摘出 4 ヵ月後に褐色帯下が出現し, 腟断端部に肉芽組織様の小隆起を認めた. 腟断端擦過細胞診にて, 炎症性背景中に扁平上皮細胞に混じて, 円柱状細胞からなる細胞集塊を認めた. 腫瘤の切除が行われ, 卵管脱の診断となった. 腟断端擦過細胞診標本中に線毛上皮がみられなかった理由を明らかにすべく, 対照として子宮頸癌症例の広汎子宮全摘術の際に得られた非腫瘍性卵管の捺印標本と擦過標本を作製したところ, 捺印標本では線毛上皮がみられたが, 擦過標本ではみられなかった.
結論 : 腟断端部卵管脱の擦過細胞標本に線毛上皮がほとんどみられない理由は, 採取時のアーチファクトが原因と思われた. 擦過法以外の採取法を用いれば, 線毛上皮が保存され, より診断にいたりやすくなる可能性が示された.
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© 2014 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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