2022 年 61 巻 3 号 p. 183-192
甲状腺細胞診にて濾胞状パターンがみられる疾患として腺腫様結節,濾胞性腫瘍,濾胞型乳頭癌などがあり,それらの鑑別に苦慮する場合が少なくない.さらに近年では,被膜で囲まれ,被膜浸潤のない濾胞型乳頭癌と診断されていた腫瘍が,新たな疾患概念として乳頭癌様核所見を伴う非浸潤性濾胞型腫瘍(non-invasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features:NIFTP)と名称を変えたことにより,ベセスダシステムでは濾胞性腫瘍の診断基準に変更が加えられた.本稿では,濾胞状パターンを示す病変の理解と診断の向上を目的に,細胞学的鑑別診断,濾胞性腫瘍の細分類や NIFTP の診断への挑戦などを述べる.