2024 年 63 巻 4 号 p. 200-206
背景:卵巣漿液粘液性境界悪性腫瘍(seromucinous borderline tumor:SMBT)は,上皮性境界悪性腫瘍の 5~7%に認められる比較的まれな腫瘍である.これまでに SMBT の臨床像,組織像の報告は多くみられるが,細胞像についての報告はきわめて少ない.今回術中腹水細胞診および捺印細胞診より SMBT を推定しえた一例を経験したため報告する.
症例:59 歳,大量腹水を伴う左卵巣腫瘍に対し開腹手術を施行した.術中腹水細胞診では異型扁平上皮細胞,細胞内に液胞を有する粘液性上皮細胞を疑う細胞を認めた.捺印細胞診では豊富な粘液を背景に扁平上皮細胞,軽度の異型を示す粘液性上皮細胞集塊を認め,SMBT と推定した.迅速病理検査では扁平上皮組織や粘液性上皮の乳頭状増殖より SMBT と診断し,子宮全摘+両側付属器+大網切除を行いリンパ節郭清は省略した.永久標本では内膜症組織や,迅速病理像と同様ミュラー管型上皮の増殖を認め,SMBT,FIGO stage ⅠC3 と最終診断した.術後 2 年経過するも再発所見はなく経過観察中である.
結論:SMBT の腹水細胞像と捺印細胞像の併用は,術中診断に有用である.