日本臨床細胞学会雑誌
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横紋筋肉腫を併発した悪性神経鞘腫“Triton tumor”の細胞学的・組織学的所見について
症例報告
笠原 正男山岸 要範八木 弥八
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1983 年 22 巻 4 号 p. 871-880

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抄録

神経鞘腫と横紋肉腫とが混在し, 移植実験の結果, 同様の腫瘍を発生することに成功し, 神経鞘腫と横紋筋肉腫との混在する腫瘍をその動物名をとりTriton tumorと称されている.本症例は31歳, 女性でVon Recklinghausen病に始まり, 右側後頭部腫瘤と縦隔に巨大腫瘍が検索された.後頭部摘出腫瘍に関し, 細胞学的, 組織学的ならびに電顕的に検討した.細胞学的には, 横紋構造を形成する紡錘形, ラケット状あるいはtadpole形の腫瘍細胞と胞体内に好エオジン性題粒を有し, 核が大きく, 多核, 連珠状核を呈する細胞も認められた.組織学的にも多形性を示す明らかな横紋を有する横紋筋肉腫で, 電顕的には束状filaments, 網状microfilaments, A帯12μ, H帯0.3μ の横紋構造が観察された.一方腫瘍細胞の中にはfiber cellsやspindl ecellsを呈する神経鞘腫に相当する所見も検索された.剖検時の巨大縦隔腫瘍の細胞学的および組織学的所見は悪性神経鞘腫であり, 膵, 卵巣に転移巣が存在していた.
末梢神経は発生学的にはneuroectodermより生じるとされており, 末梢神経腫瘍には時にosteoid, angioma, myogenictumor, lipoma等の合併がみられ, とくにVon Recklinghausen病を伴う症例に検索されることが多いとされている.この現象は, neuroectoderm由来の腫瘍はmultipotentialityを有しいると考えられる, 間葉系由来の腫瘍組織の成り立ちについて興味ある事実が証明された.

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