日本臨床細胞学会雑誌
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封入細胞を認めた直腸カルチノイドの1例
大高 啓豊原 時秋望月 福治石岡 国春沢井 高志
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1984 年 23 巻 4 号 p. 646-652

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抄録

カルチノイドの細胞診に関する文献はこれまでいくつか報告されているが, 封入細胞を認めた症例の記載はいまだみられていない.われわれは封入細胞が混在し, しかもGrimelius染色塗抹細胞診により封入細胞もカルチノイド腫瘍細胞であることが判明した症例を経験したので, 若干の考察を加えて報告する.
症例は73歳, 男性.直腸腫瘍の外科的摘除術および肝左葉切除術を施行し, 手術標本の組織診断で直腸カルチノイドとその肝転移と診断された.腫瘍細胞は小型で円形, i類円形ないし多辺形, おもに散在性または平面状配列を示し, 一部に重積性配列や腺腔様配列および封入像を示す細胞集団が認められた.核は小型で円形ないし類円形, 大小不同性に乏しく, 核クロマチンは正染穎粒状で異型性は認められなかった.Grimelius染色による細胞診では腫瘍細胞が陽性となり, カルチノイド腫瘍と診断した.封入細胞は癌, 肉腫あるいは良性疾患においても出現するといわれているが, 本症例にみるようにカルチノイド腫瘍にも出現することが明らかになった・なお, カルチノイドを疑う場合, 組織診と同様に細胞診においてもGrimelius染色がカルチノイドの同定に有用であった.

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