抄録
多量の心嚢液貯留をきたし, 心嚢穿刺液細胞診にて多数の異型細胞を認め, 剖検により縦隔起源のembryonal carcimomaと確定し得た中年女性の症例を, 主として心嚢穿刺液細胞所見について報告する.
症例は55歳の女性で, 嗄声と咳嗽の症状で経過中, 心タンポナーデを呈した.心嚢穿刺を施行すると多量の血性液が吸引され, 細胞診上多数の腺型悪性細胞を認めたが, 原発巣は明らかにされなかった.腫瘍細胞はおおむね腺管様ないし乳頭状配列を示す細胞集塊としてみられ, ライトグリーン好性の細胞質と比較的大小不同に乏しい類円形核を有していた.核膜は明瞭で, 肥大した類円形の核小体を1~2個認めた.また, 彎入核を有する細胞も散見された.発症後3ヵ月で死亡し, 剖検すると, 前上縦隔に6×4×4.5cm大の腫瘍があり, 心嚢へ直接浸潤していた.組織学的に, 腫瘍は乳頭状・腺管様・充実性増殖を示すembryonal carcinomaの像で, PAS反応は陰性であった.また, PAP法による免疫染色では, AFP・HCG・胎盤性アルカリフオスファターゼのいずれも陰性であった.両側卵巣に腫瘍性変化および瘢痕巣は認められなかった.