1992 年 31 巻 3 号 p. 363-370
細胞診による脳腫瘍の診断をより正確にするため, 手術摘出材料からの捺印細胞標本を用い, 各種脳腫瘍の細胞像の特徴を明らかにするとともに, 免疫細胞化学的検討を行った.
脳腫瘍の細胞像の特徴を3群に分けた. 第1群の紡錘形細胞群に属するastrocytoma, meningioma, neurinomaなどでは, 線維の走向の具合や細胞相互の接着性の違いがそれぞれにみられ, 第2群の円形細胞群に属するmedulloblastoma, ependymoma, oligodendroglioma, neurocytoma, pituitary adenomaなどではおのおのに特徴が少なく鑑別に苦慮した. 第3群の多形細胞群に属するgliloblastomaやmetastatic carcinomaなどでは細胞結合性の強弱に差がみられた.
免疫細胞化学的検討の結果, GFAP, EMA, FNを組合わせてglia系腫瘍と非glia系腫瘍を鑑別できた. NSE, Leu7, LCAなどを組合わせた結果medulloblastoma, lymphoma, oligodendroglioma, neurocytomaなどが鑑別できた. GFAP, EMA, CEAを組合わせglioblastomaとmetastaticcarcinomaが鑑別できた. 類似した細胞像を示す脳腫瘍の鑑別に, いくつかのマーカーを組合わせ使用すると有用なことがわかった.