日本臨床細胞学会雑誌
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術前診断された微小胃癌および小胃癌の臨床細胞学的検討
各務 新二渡辺 昌俊白石 泰三矢谷 隆一
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1992 年 31 巻 3 号 p. 405-412

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抄録

直視下胃生検組織診と擦過細胞診とを併用し, 胃癌と診断され, 切除された早期胃癌70例のうち, 微小胃癌8例, 小胃癌23例について臨床細胞学的検討を行い, 以下のような結果を得た.
1) 微小胃癌8例における陽性率は, 生検組織診75.0%, 擦過細胞診25.0%で, 両者を併用した場合は87.5%となり, 12.5%の成績向上が示された. 小胃癌23例における陽性率は, 生検組織診82.6%, 擦過細胞診47.8%で, 両者を併用した場合は82.6%と生検組織診単独の検査結果と同率であった.
2) 生検組織診誤陰性または疑陽性例が細胞診疑陽性または陽性のため再検により癌と正診された例が微小胃癌, 小胃癌で2例ずつみられ, 正診率が全体で93.5%に向上し, 併用による臨床的意義がみられた.
3) 癌症例を細胞診で正診できなかった原因を再検討した結果, 病巣側では, 白苔または非癌上皮の被覆があったこと, 露出部の癌密度が疎であったこと, 臨床側では, 生検採取後の出血により, 内視鏡観察が不十分であったことなどにより標本上に腫瘍細胞の数が少なかったことがあげられた. 今後, 内視鏡下での存在診断を含め, 手技の確立が望まれる. 一方, 病理側では, 形態的因子として,(1) 標本上に少数しかみられない細胞異型の弱い癌細胞の鑑別,(2) 陥凹型異型上皮巣 (atypical epitherial hyperplasia, 以下ATPとする) と類似したあるいは併存した高分化型腺癌の鑑別,(3) 良性異型細胞と類似した分化型腺癌の鑑別, に要約された.

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