日本臨床細胞学会雑誌
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膀胱腫瘍の核DNA量と尿細胞診成績
藤野 通宏宮本 宏磯部 宏秋田 弘俊永森 聡富樫 正樹遠藤 隆志井上 和秋阿部 庄作川上 義和
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1992 年 31 巻 3 号 p. 426-430

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抄録

膀胱腫瘍356例の尿細胞診成績を解析し, さらにフローサイトメトリーにより膀胱腫瘍切除標本135例の核DNA量を測定し, 両者の関係を腫瘍の組織異型度, 深達度ごとに検討した.
腫瘍の組織学的深達度でみると細胞診陽性率はT1で41%, T2で76%, T3で80%, T4で90%と深達度が進むほど高くなった.一方DNA aneuploidyの割合もT1では49%, T2では67%, T3aからT4にかけては80%以上であり, DNA indexもT1からT4にかけて増加した.
腫瘍の組織学的異型度でみると細胞診陽性率はG1で27%, G2で66%, G3で85%と異型度が増すほど高くなり, 一方DNA aneuploidyはG1で42%, G2で64%, G3で90%と増加し, DNA indexもG1からG3にかけて増加した.
DNA diploid腫瘍は全体の約40%を占め, 組織異型度が低いほどその割合が上がり, 尿細胞診陽性率は下がった.膀胱のDNA diploid腫瘍の尿中細胞は細胞異型度が低く形態学的に悪性と診断することが困難になると考えられる.

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