日本臨床細胞学会雑誌
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コルポスコープ, 細胞診像が特徴的であった子宮頸部乳頭状扁平上皮癌の1例
梅澤 聡南 敦子山内 一弘杉山 裕子平井 康夫都竹 正文荷見 勝彦
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1995 年 34 巻 6 号 p. 1181-1185

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抄録

子宮頸部の乳頭状扁平上皮癌 (papillary squamous cell carcinoma: PSCC) は非常にまれな子宮頸部悪性腫瘍である. 本疾患は名称が示すように, 子宮膣部から腫瘍の乳頭状の隆起を認め, 血管を含む問質を茎に扁平上皮系の腫瘍細胞が増殖する特徴的な形態を持っている. 本報告の症例では肉眼的, および, コルポスコープ上に著明な乳頭状の腫瘍増殖を観察できた. PSCCの典型例と思われる本症例の細胞学的, 組織学的所見は, 肉眼的所見をよく反映していた. 本症例の細胞像で特徴的な点は巨大な細胞集塊が散在し, その細胞集塊には血管を含む問質が存在することである. また, 血管を含む間質のみの出現も認めた. これらは乳頭状増殖病変の存在を示唆する重要な所見と考えられた. そのほかの細胞所見としては, 1) 著明な出血性背景中に深層型の小型の悪性細胞が集塊状あるいは, 散在性に多数出現した. 2) 核型は円から楕円形. 一部核不整を示し, 核縁肥厚は軽度であった. 3) クロマチンは細顆粒・細網状を呈した. 4) 核小体は不鮮明あるいは小型1~2個であった. 5) 角化型の悪性細胞も少数だが出現する一方, 悪性度の低い扁平上皮由来の細胞が集塊状あるいは散在性に認められた.
組織学的には乳頭状増殖部分の細胞層は上皮内癌様の形態を示した. あきらかな浸潤部分は腫瘍基底部にあり, 組織型は扁平上皮癌であった. PSCCの浸潤の確定診断のためには襖状あるいは円錐切除診が必要であると考えられた.

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