2000 年 14 巻 2 号 p. 66-77
要 旨
本研究は,ターミナルステージにあるがん患者の希望とそれに関連する要因について探求することを目的として,ホスピスに入院中またはホスピス外来通院中の12名を対象に,参加観察法と非構成的な面接法を用いてデータを収集し,質的に分析を行ったものである.
その結果,ターミナルステージにある人の希望として【生きること】,【自分らしさの表現】,【死を超越すること】という3つのカテゴリーが見出された.【生きること】には[回復]と[生き長らえること]が,【自分らしさの表現】には[自由性][自立性][今ある生の実感][人生の完成]が,【死を超越すること】には[自己の生きた証を残す][死後の世界への希望][他者の幸福を願う]がそれぞれサブカテゴリーとして含まれていた.また,希望に関連する要因として《希望を維持する内的活力》《死の認識》《希望が育まれる場》が見出された.
これらの希望の様相として見出されたカテゴリーを基に希望の意味を考察すると,ターミナルステージにあるがん患者にとって希望は自己の存在のあり方を表していると考察された.