日本がん看護学会誌
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原著
乳がん体験者の術後上肢機能障害に対する主観的認知尺度の作成と信頼性および妥当性の検討
佐藤 冨美子
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2008 年 22 巻 1 号 p. 31-42

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抄録

要 旨

本研究は乳がん体験者の術後上肢機能障害に対する主観的認知尺度を作成し,信頼性および妥当性を検討することを目的とした.尺度原案は文献および乳がん体験者,医師,作業療法士を対象とした面接調査による質的なデータを基盤として,5段階のリッカート尺度をもつ腫脹,痛み,肩関節可動域の縮小,知覚鈍麻,筋力の低下,皮膚のひきつれ感に関する12項目で作成した.次に看護研究者9名と看護実践者8名を対象に尺度原案の内容妥当性を検討し,3項目加えて15項目にし,修正した.信頼性および妥当性の検討を目的とした調査は2回実施し,被験者1が56名,被験者2が150名を対象とした.その結果,尺度のCronbach’s α係数は0.88~0.92であり,項目と全体の相関係数は被験者1の調査でrs=.41~.80(p<.01),被験者2でrs=.37~.84(p<.01)と有意な相関が認められ,内的整合性が確認された.因子分析では1因子が抽出されたが,治療や看護が異なる15項目を個別に捉える尺度として分析した.日本版上肢障害評価表との相関係数はrs=.26~.71(p<.01~.05)で,5~26項目と有意な正の相関がみられた.VASとの相関係数はrs=.25~.50(p<.01~.05)で有意な相関がみられ,基準関連妥当性が確認された.また,表面妥当性は支持された.臨床的妥当性の検討では,尺度15項目が14.0~69.3%の対象者に認知されていた(被験者2).したがって,本尺度の信頼性および妥当性は保持されていると考えられた.今後,本尺度は乳がん体験者の身体状況を測定する研究や,術後上肢機能障害の予防緩和に向けた介入のアセスメントツールの一つとして活用が可能であろう.

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2008 一般社団法人 日本がん看護学会
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