2008 年 22 巻 1 号 p. 55-64
要 旨
本研究の目的は,患者が移植の自己決定した過程および,病名告知から移植実施に至るまでの身体的問題,心理・社会的問題を明らかにし,造血幹細胞移植(以下,移植)を受ける患者の自己決定を支援するための看護介入プログラムを開発することである.
半構成的質問紙を用いた面接を,研究参加に同意を得られた18~55歳の移植を受けた患者(13名)に行い,対象者が移植を医師から説明され決定し,移植を受けるまでの期間における身体的苦痛について内容を分析した.
その結果,移植に関する受け止めは,『命が助かる』,『移植しかない』,『先延ばしできない』,『病院に来なくて済む』の4つのカテゴリーに分類され,疾患や治療の解釈がさまざまであった.特に意思決定するまでの気持ちの揺れと迷いは,〈移植の目的の再確認〉〈自己の有能さの再確認〉の2つのフィードバックの過程であると考えられた.医師から提示された移植を外発的動機づけによって選択した後,気持ちの揺れや迷いに対処して内発的動機づけによる移植の自己決定へと転換する過程であり,一度行った意思決定を移植までの期間に前向きに進めるためには,Deciの認知的評価理論が適応できると考えられた.
移植を受ける患者の自己決定を支援するためには,自己決定の過程での気持ちの揺れや迷いに対処できることが必要である.これらのことから,認知的・情緒的・教育的支援と積極的傾聴を用いて内発的動機づけによる自己決定を支援するための看護介入プログラムを開発した.