2008 年 22 巻 2 号 p. 4-13
要 旨
本研究の目的は,外来化学療法を受けるがん患者の“前に向かう力”はどのようなものであるかを明らかにし,適応のプロセスを促進させる看護の示唆を得ることである.外来化学療法を受けているがん患者10名を対象に半構成的な面接法を用いてデータ収集し,因子探索型持続比較分析を行った.その結果,“前に向かう力”として【生きることへの信念】【自己の能力の放出】【自己のあり様の創出】【日常的価値の発見】の4つの要素が明らかになった.【生きることへの信念】は他の要素の原動力になっており,患者は生への強い願いを抱きながら,自分自身の能力でできる事柄に懸命に取り組んでいた.またがんや化学療法という現実に向かっていくために,自分自身のあるべき姿を創り出したり,生や日々のありがたさに気づき価値をみいだすとともに,それらの事柄に懸命に取り組もうとしていた.看護師は患者が日常生活のなかにうまく外来化学療法を組み込み,主体的な療養生活を送ることができるように,患者の生きる希望を支えることによって,“前に向かう力”を高め,適応を促進させることができると考える.