日本がん看護学会誌
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研究報告
がんサロンに参加するボランティアの体験
佐藤 恵子
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2012 年 26 巻 1 号 p. 32-40

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抄録

要 旨

近年,がん患者・家族の交流の場としてがんサロン(以下,サロン)が設けられてきている.本研究は,がん患者や家族がボランティアとして看護師と協働でサロンを運営している場合において,ボランティアのサロンにおける体験を明らかにすることを目的とした.ボランティア8名に半構造化面接を行い,サロンに対する思いについての語りを抽出した.分析は質的帰納的方法で行った.結果,ボランティアの体験は,【がんで悩む人の元気回復への願い】,【サロンの必要性を実感】,【自己の存在意味の強化】,【対応の困難感】,【メンバーへの信頼】,【自分自身への癒し】の6コアカテゴリーに分類された.ボランティアは,がんで悩む人の力になりたい,元気を取り戻して欲しいという,【がんで悩む人の元気回復への願い】があり,そのためには気持ちを話すことが大切であり,実際共感しあえるなど,【サロンの必要性を実感】した.また,自分の人生を生かしたい,訪問者の役に立てたと実感するという,【自己の存在意味の強化】を体験した.一方,自己嫌悪におちいったり,訪問者の深刻な話に戸惑い,【対応の困難感】を感じた.対応の困難感は,【メンバーへの信頼】を深めることで対処できた.そして,サロンの体験がボランティア自身の気持ちの安定につながり,他者の生き方が学びとなる,自分自身の生かし方がみえてくるなど,【自分自身への癒し】となった.この癒しの体験は,がんサバイバーとして,新たながんに対するコントロール感覚の獲得を意味していると考えられる.医療者は,ボランティアの葛藤やニーズを理解し,共にいることの支援を継続していくことが重要と考える.

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2012 一般社団法人 日本がん看護学会
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