2012 年 26 巻 1 号 p. 4-11
要 旨
治療に取り組んでいる多くのがん患者は,心身の安定を得るためにさまざまなセルフケアの継続が求められている.その継続にはセルフケアの基盤となるセルフケア能力の獲得と活用が重要と考える.本研究の目的は,がん治療を受ける際に必要となるセルフケア能力を明らかにすることであった.同意が得られた治療中のがん患者20人にインタビューを実施し,結果の信頼性を高めるため,論理をもとに推論できるKrippendorffの内容分析を行った.がん患者のセルフケア能力は看護師やその他の医療従事者の関与あるいは患者自身が体験から獲得した能力であった.そして【体調の変化をとらえる能力】,【自主的に判断し保健行動を形成する能力】,【がんの存在にとらわれないよう思考を和らげ進む能力】,【人とのつながりを保ち社会生活を調整する能力】,【生き方を見つめ自己の発達を促す能力】の5つの大表題と11の表題より表された.このセルフケア能力はセルフケアを促すための総合的な能力であることが明らかになった.