日本がん看護学会誌
Online ISSN : 2189-7565
Print ISSN : 0914-6423
ISSN-L : 0914-6423
研究報告
難治性のがんを生き抜く ─膵がん患者の語り─
吉田 みつ子
著者情報
キーワード: 難治性がん, 膵がん, 語り
ジャーナル フリー

2014 年 28 巻 2 号 p. 15-22

詳細
抄録

要 旨

本研究は,膵がんと診断された患者が難治性のがんをどのように生き抜こうとしているのかを明らかにし,そこに求められる看護の意味や方向性を検討することを目的とする.研究参加者は2名の女性の膵がん患者であり,治療や療養生活の経過,治療法の選択や今の思い,これからのことなどについて関心事や懸念に沿って語ってもらい,ICレコーダーに録音した.逐語録を作成し,患者の経験の特徴について,Bennerの現象学的人間論を基盤に分析・解釈した.

「再発を見据え,治療を探し求めて生き抜く」,「死がみえてきたとき,生き抜く道を探す」という経験の特徴が明らかになり,彼らが診断時から予後不良という苦悩の中に身を置き,生活の背景に死の不安が常に存在する様相がうかがわれた.彼らは予後不良や死という意味を医療従事者との相互作用を通して取り込み,いずれ再発,治療の手立てがなくなることを理解し受けとめるように期待され,彼らもまたそれに備えようとして格闘していたと考えられた.社会一般が付与する「膵がん=死」という意味づけ,未来への志向を閉ざされた中で生きること自体が格闘であった.難治性がん患者への支援においては,未来への志向性,「膵がん」の意味づけ,医療従事者・患者間の時間の捉え方の異和を,援助方法論の軸に据えることが示唆された.

著者関連情報
2014 一般社団法人 日本がん看護学会
前の記事 次の記事
feedback
Top