目的:がんと認知症を併せ持つ高齢患者への老人看護専門看護師による看護実践を明らかにする.
方法:老人看護専門看護師7名を対象に半構造化面接を実施し,質的記述的研究手法を参考に分析した.
結果:対象者は急性期病院,特別養護老人ホーム,訪問看護などでのがんと認知症を併せ持つ高齢患者への看護実践を語った.66コード,11サブカテゴリ,3カテゴリ【がんと認知症によって引き起こされる複雑な身体・心理的苦痛の緩和】【がんと認知症の併存を有利にとらえた援助】【がん診断・治療が認知症の人にもたらす意味の検討】が明らかとなった.
結論:老人看護専門看護師は,がんと認知症による影響を複合的にとらえ,患者の認知症に配慮しながらがんによって生じる身体的・心理的苦痛を緩和していた.また,がんと認知症の併存によって医療・福祉サービスがより多く受けられる,病状の予測がより可能になるなど,認知症とがんの併存を有利にとらえ,支援に活かしていた.認知症によって患者の意向が表面化しづらいため,患者にとってのがん診断・治療の意味を家族・支援者とともに検討していた.