日本クリニカルパス学会誌
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Print ISSN : 2187-6592
実践報告
宮城県における地域医療機関の前立腺がん診療に対する実態調査と前立腺がん地域連携クリニカルパスの作成
金森(瀬谷) 裕貴子中川 晴夫
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2015 年 17 巻 1 号 p. 23-29

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抄録

 早期前立腺がんで前立腺全摘除術が施行された症例の多くは長期予後が良好なため、泌尿器科非専門医であっても定期的なPSA(Prostate Specific Antigen)値測定による経過観察が可能である。今回、前立腺がん全摘除術後の経過観察に用いる地域連携クリニカルパス(以下、前立腺がんパス)を作成し、前立腺がんの地域連携の現状と課題について検討した。宮城県内一部地域の医師会会員を対象に、あらかじめ前立腺がんパスの原案を示したうえで構成的質問紙法およびリッカートスケールを用いたアンケート調査を実施した。設問は前立腺がんパス、5大がん地域連携クリニカルパス(5大がんパス)、地域連携診療の体制および地域連携パスの課題に関する20項目から構成した。前立腺がんパスの印象は「判断に迷った時、専門医に相談しやすい」「開業医の役割が明確だ」が上位を占めた。また、前立腺がんパスを用いた場合、82%の医療機関が前立腺がん患者の対応が可能と回答した。さらに、調査結果をもとに宮城県の地域医療機関を対象とした学術講演会を開催し、国際的に標準化されたPSA値による前立腺がん再発の基準を取り入れ、開業医の要望に沿った前立腺がんパスの普及に努めた。地域における前立腺がんパスの導入は可能であり、専門医・非専門医の役割を明確に示すことで、非専門医の受け入れが容易になることが示唆された。地域医療機関の要望を反映した前立腺がんパスの作成により、泌尿器科専門医と非専門医間での診療連携体制の向上が期待できる。

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© 2015 一般社団法人日本クリニカルパス学会
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