2015 年 17 巻 3 号 p. 261-267
周術期口腔機能管理料の保険収載に伴い、病院においては口腔ケアの需要が高まっている。口腔ケアとは、「口腔の疾病予防、健康保持・増進、リハビリテーションによりQOLの向上をめざした科学であり技術」とされているが、それぞれの病院のおかれた環境でその実態は異なる。病院歯科が設置されていない医療機関では、特にその対応が様々である。福井県あわら温泉で行われた第15回日本クリニカルパス学会学術集会(勝尾信一会長)におけるシンポジウム6「チームで進める口腔ケア」では、各シンポジストが、「異なった環境にあるそれぞれの医療機関での口腔ケアの現状と工夫」を発表され、有意義かつ教育的であった。特に歯科のない医療機関での地域歯科医療機関との連携、歯科衛生士の単独雇用などが実際に機能している点は示唆に富むものであった。一方、口腔ケアの問題点や今後の方向性を考える上で重要な点の一つには、口腔ケアのエビデンスレベルを理解することも含まれる。本稿では口腔ケアのエビデンスレベルにつき検討したが、口腔ケアとそれにより制御される疾患に対するエビデンスレベルは十分ではない。これらのエビデンスレベルをあげることが、治療上、健康保険上も喫緊の課題であると考えられた。次いで各職種とのチーム医療をどのように構築するのか、当院における脳神経系病棟への口腔ケアの多職種チームによる介入の現状につき記載した。