日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
17 巻, 3 号
日本クリニカルパス学会誌 第17巻 第3号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
総説(第15回学術集会)シンポジウム6チームで進める口腔ケア:基調講演
  • 坂本 春生, 唐木田 一成, 関谷 亮, 高橋 美穂, 鈴木 大貴, 中嶋 弘美, 神庭 由貴, 平山 可菜
    2015 年17 巻3 号 p. 261-267
    発行日: 2015/09/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     周術期口腔機能管理料の保険収載に伴い、病院においては口腔ケアの需要が高まっている。口腔ケアとは、「口腔の疾病予防、健康保持・増進、リハビリテーションによりQOLの向上をめざした科学であり技術」とされているが、それぞれの病院のおかれた環境でその実態は異なる。病院歯科が設置されていない医療機関では、特にその対応が様々である。福井県あわら温泉で行われた第15回日本クリニカルパス学会学術集会(勝尾信一会長)におけるシンポジウム6「チームで進める口腔ケア」では、各シンポジストが、「異なった環境にあるそれぞれの医療機関での口腔ケアの現状と工夫」を発表され、有意義かつ教育的であった。特に歯科のない医療機関での地域歯科医療機関との連携、歯科衛生士の単独雇用などが実際に機能している点は示唆に富むものであった。一方、口腔ケアの問題点や今後の方向性を考える上で重要な点の一つには、口腔ケアのエビデンスレベルを理解することも含まれる。本稿では口腔ケアのエビデンスレベルにつき検討したが、口腔ケアとそれにより制御される疾患に対するエビデンスレベルは十分ではない。これらのエビデンスレベルをあげることが、治療上、健康保険上も喫緊の課題であると考えられた。次いで各職種とのチーム医療をどのように構築するのか、当院における脳神経系病棟への口腔ケアの多職種チームによる介入の現状につき記載した。

実践報告
  • 熊谷 恵理, 佐藤 耕一郎, 中村 仁, 浅沼 由子, 小原 美智子, 遠藤 雅俊, 小野寺 つや子, 佐々木 真須子, 加藤 博孝
    2015 年17 巻3 号 p. 271-275
    発行日: 2015/09/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    目的:当院外科の手術用パスは、術前後の輸液量が体重で異なるために電子パスに組み込めず、少数の看護観察パスのみとなっていた。そのため、毎日看護師が医師に輸液種類、量を確認する必要があり、看護業務に支障を来していた。そこで手術に関係するクリニカルパス(以下、パス)15種類に体重を5段階に分けて輸液量を盛り込んだパスを作成し、有用性を検討した。

    方法:2012年1〜3月に体重別パスを使用していた時期に外科病棟に入院して手術を行った156名と2011年10〜12月に同じ看護師のメンバーで従来の看護観察パスを使用していた時期に入院して手術を行った対照群146名について両群の背景因子、パス適用率、看護師1人の1ヵ月平均超過勤務時間、外科病棟の1ヵ月平均総超過勤務時間、病棟看護師の使用前後の感想についてレトロスペクティブに検討した。

    結果:両群間の背景因子に有意差を認めなかったが、適用率は有意に体重別パス群で高く、看護師1人の1ヵ月平均超過勤務時間も体重別パス群で有意に短く、外科病棟の1ヵ月平均総超過勤務時間も少なかった。さらに、体重別パスにより大部分の看護師は仕事が楽になったと答えた。これらはパス数を増加させたため、術前・術後の指示受けや医師への確認作業が減少し、業務時間を調整できたためと考えられた。

    結論:体重別パスを使用することによりパス数の増加と適用率が向上し、看護師の超過勤務時間の減少と業務改善につながったと考えられた。

  • 佐藤 耕一郎, 中村 由美子, 小野寺 真理, 松永 高志, 廣沼 めぐみ, 小原 美智子, 藤原 直人, 氏家 基元, 加藤 博孝
    2015 年17 巻3 号 p. 276-282
    発行日: 2015/09/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    目的:当院のクリニカルパス(以下、パス)適応率は52.5%と低く、原因は医師やパスに関係が少ない部門の理解が低いためである。そこでパスの理解と適応率増加を目的とし、e-ラーニングにてパスの基礎知識習得に努めたので報告する。

    方法:1)旭中央病院パス委員会作成のパス問題1,2)を自己学習後、医師以外の主な職員392名にe-ラーニングで回答させた。2)全職員494人を対象にパスの基礎を講義後、初級、中級、上級パス基礎問題を作成し、同様に回答させ、合格者率を検討した。3)新たな対策として上級合格を人事考課最高ランク取得の必要条件とし、その後の合格者率とパス適応率を検討した。

    結果:1)問題の実施率が高い部門はリハビリ、薬剤、栄養、検査、5西病棟、4西病棟、3西病棟であったが、その中で合格者率がリハビリ0%と低い部門を認めた。2)上級編合格者率の高い職種は取り組みが積極的であった検査、栄養、リハビリ、薬剤科であり、低いのは医師、事務であった。病棟ごとでは、パス適応率の高い科が属する3西病棟看護師合格者率が上級50%と高く、パス適応率の低い科が属する4東と3東病棟看護師合格者率は上級6.25%、18.75%と低かった。3)新たな対策は、医師以外の職種には効果的であり、最終的に約7%のパス適応率増加を認めた。

    結論:パスに関するe-ラーニング施行により、パスに関係の少ない部門のパスへの理解が高まり、パス適応率が向上した。

  • 北岡 美紀, 髙橋 まり子, 平田 嗣博
    2015 年17 巻3 号 p. 283-287
    発行日: 2015/09/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     今日、精神科に長期入院している患者を地域移行していくことは大きな課題である。我々は、精神療養病棟において長期入院に至っている患者に対して多職種で関わることができる退院支援および地域連携クリニカルパスを作成し適用した。

     そして研究の趣旨に同意した7名の対象者(平均60歳、入院期間1年~23年)にこのクリニカルパス(以下、パス)を試みたところ患者は病院での安定した生活を望み地域での生活に多くの不安を抱いて退院を希望しなかった。

     患者に社会復帰してほしい、地域で生き生きと暮らしてほしい、諦めないでほしいという思いから患者の個別性を踏まえつつあえて時間軸を外し心理的支援に重点を置いたパスとした。

     退院支援および地域連携クリニカルパスを用いたことで多職種で関わる際の現在のポイントが可視化でき情報共有がしやすくなった。また思いを言語化しにくい患者の気持ちを代弁し支援につなげる役割が担えるようになったので報告する。

  • 西村 裕之, 加用 樹里, 松岡 真弓
    2015 年17 巻3 号 p. 288-293
    発行日: 2015/09/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     脳卒中地域連携クリニカルパス(以下、連携パス)を7年間運用した経験を踏まえ、今後の維持・改善のために、パスシートの内容、運用、組織、アウトカム等を含めた総合的な質の評価を行うことが必要と考えた。

     ドナベディアンモデルを参考に、①Structure構造、②Process過程、③Outcome結果の3階層で合計75の評価項目と評価システムを作成し、計画管理病院と連携医療施設から評価委員を選定し評価を行った。評価結果は、構造では「適切・おおむね適切」が8項目、「あまり適切でない・適切でない」が6項目、過程では「適切・おおむね適切」が24項目、「あまり適切でない・適切でない」が4項目、結果では「適切・おおむね適切」が33項目、「あまり適切でない・適切でない」が0項目となった。

     評価結果はおおむね良好であったが、これまで連携活動の中で埋もれていた課題を客観的に把握することができた。

     構造では、回復期以降の委員会・運用システム整備、個人情報管理、相談窓口等が課題としてあげられ、運用マニュアル作成やスタッフの認証番号管理の整備を行い、相談窓口の設置を進めている。過程では、パスシートの修正・追加、記入漏れチェック体制、教育・人材育成等があげられ、パスシートの改定、統一された記入マニュアルの作成等を行った。残された課題や、継続して取り組むべき課題もあり、今後も問題点を分析し、パスシート、連携体制の見直しを行っていきたい。

  • 侭田 敏且, 飯島 卓夫, 徳山 周, 伊藤 直美, 水野 清, 柳田 千尋, 園田 恭子
    2015 年17 巻3 号 p. 294-299
    発行日: 2015/09/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     大腿骨頸部骨折の地域連携パス作成に2006年6月から取り組み、10月から地域連携パスを使用した紹介を開始した。今回6年間の運用状況の変化を知るために2008年1月から2010年12月までの前半3年間(以下、A群)と2011年1月から2013年12月までの後半3年間(以下、B群)に分けて地域連携パスの運用状況を比較検討した。自宅退院はA群38例、B群15例で、連携パス群はA群50例、B群47例で、非連携パス群はA群43例、B群19例であった。連携パスの適応率はA群では54%で、B群では71%であり、B群の連携パスの割合は増加していた。平均在院日数は、連携パス群はA群30.4日、B群31.9日、非連携パス群はA群36.7日、B群37.8日であった。それぞれAB群間で差がなく、それぞれの連携パス群は非連携パス群より短かった。平均総在院日数は、連携パス群はA群105日、B群83.3日、非連携パス群のリハビリ病院群はA群133日、B群98.2日で、それぞれB群はA群より短かった。またそれぞれの連携パス群は非連携パス群より短かった。よってA群B群とも連携パスは、在院日数、総在院日数の短縮に効果的であり、B群はA群より早期に自宅退院が可能になっていた。理由としては、回復期リハビリテーション病院での1日当たりのリハビリ時間の延長、休日のリハビリ実施、退院に向けての準備の早期化などが考えられた。

特集(第15回学術集会)シンポジウム1 患者さんから見た地域連携パス
特集(第15回学術集会)シンポジウム6 チームで進める口腔ケア
特集(第15回学術集会)パネルディスカッション1 明日につなぐパス教育
feedback
Top