2016 年 18 巻 3 号 p. 193-198
片側人工膝関節全置換術(TKA)において、我々は術後5日退院のクリニカルパス(以下、パス)を運用し、自宅退院を目指している。今回、パスの達成率を調査し、パス達成の阻害因子を検討した。対象は片側TKAを施行した136例(平均年齢72.0±8.5歳)である。調査項目は、年齢、身長、体重、術前血中総蛋白、同居人の有無、入院歴(外科的手術、中枢神経疾患等)の有無、術前膝関節可動域(ROM)、術前膝伸展筋力(WBI)、術前疼痛、術前WOMAC、手術時間、退院時膝関節ROMである。術後5日以内に自宅へ退院したものを達成群、術後在院日数が6日以上あるいは自宅退院不可能であったものを非達成群とし、多重ロジスティック回帰分析を用いて統計処理を行った(p<0.05)。術後平均在院日数は5.1±0.4日、達成群は117例86%、非達成群は19例14%であった。多重ロジスティック回帰分析では、入院歴、術前術側・非術側膝伸展ROM、術前術側WBI、非術側歩行時痛、手術時間がバリアンスに影響する因子として抽出された。結果より、個人因子である入院歴、術前術側WBI、膝伸展ROM、非術側の歩行時痛が、パス達成の阻害因子となりうることが明らかとなった。術前膝伸展筋力と術前膝伸展ROMを改善し、さらに非術側膝の疼痛軽減を図ることで、パス達成率が改善する可能性が示唆された。