日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
18 巻, 3 号
日本クリニカルパス学会誌 第18巻 第3号
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原著
  • 町田 理恵子, 妹尾 賢和, 宮内 秀徳, 伊藤 美雪, 金山 竜沢, 東 秀隆, 蟹沢 泉
    2016 年 18 巻 3 号 p. 193-198
    発行日: 2016/09/10
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     片側人工膝関節全置換術(TKA)において、我々は術後5日退院のクリニカルパス(以下、パス)を運用し、自宅退院を目指している。今回、パスの達成率を調査し、パス達成の阻害因子を検討した。対象は片側TKAを施行した136例(平均年齢72.0±8.5歳)である。調査項目は、年齢、身長、体重、術前血中総蛋白、同居人の有無、入院歴(外科的手術、中枢神経疾患等)の有無、術前膝関節可動域(ROM)、術前膝伸展筋力(WBI)、術前疼痛、術前WOMAC、手術時間、退院時膝関節ROMである。術後5日以内に自宅へ退院したものを達成群、術後在院日数が6日以上あるいは自宅退院不可能であったものを非達成群とし、多重ロジスティック回帰分析を用いて統計処理を行った(p<0.05)。術後平均在院日数は5.1±0.4日、達成群は117例86%、非達成群は19例14%であった。多重ロジスティック回帰分析では、入院歴、術前術側・非術側膝伸展ROM、術前術側WBI、非術側歩行時痛、手術時間がバリアンスに影響する因子として抽出された。結果より、個人因子である入院歴、術前術側WBI、膝伸展ROM、非術側の歩行時痛が、パス達成の阻害因子となりうることが明らかとなった。術前膝伸展筋力と術前膝伸展ROMを改善し、さらに非術側膝の疼痛軽減を図ることで、パス達成率が改善する可能性が示唆された。

研究報告
  • 石川 徹, 河村 進, 舩田 千秋
    2016 年 18 巻 3 号 p. 201-207
    発行日: 2016/09/10
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     ビスフォスフォネート製剤および骨吸収阻害剤のデノスマブは副作用として顎骨壊死が発生することが知られている。顎骨壊死は口腔衛生状態の不良がリスクファクターとしてあげられており、その予防には医師と歯科医師の綿密な協力が不可欠である。

     我々はがん治療を行う拠点病院の医師および歯科医師と地域の歯科医院が連携し、顎骨壊死の予防および治療を行うための地域連携クリニカルパスを開発し運用を行った。

     顎骨壊死予防のための地域連携クリニカルパスの問題点として拠点病院と連携歯科医院間での情報共有の方法、受診間隔があげられた。地域連携クリニカルパスを運用した11症例のうち平成27年11月までに顎骨壊死が発生した症例は2例であった。顎骨壊死が発生した症例では共に抗菌薬の長期投与が行われたが、地域連携を行ったことで早期に顎骨壊死を発見したことから、症状は日常生活に支障のない状態で維持することが可能であった。しかしながら連携歯科医院において顎骨壊死の診断、治療を行うことは困難であるなどの問題点が明らかとなった。

     以上のことから、地域連携による顎骨壊死予防および治療は地域連携クリニカルパスを用いることにより実施が可能であると考えられた。しかしながら、拠点病院と連携歯科医院との役割分担およびそれぞれの施設間での情報共有の方法、顎骨壊死の予防法の統一などが今後課題となると考えられた。

実践報告
  • 勝尾 信一, 吹矢 三恵子, 中川 美絵, 片岡 亜季子, 清水 秀美, 坂下 香苗, 吉岡 準平, 吉田 仁美, 見澤 美雪, 吉江 由加 ...
    2016 年 18 巻 3 号 p. 211-219
    発行日: 2016/09/10
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    目的:バリアンス収集方法の違いを検証する。

    方法:バルーン椎体形成術(Balloon Kyphoplasty:BKP)パス27回を対象に、4種類のバリアンス収集方式別にバリアンス収集・分析を行い、バリアンス件数、提案された改善策の内容を検討した。

    結果:退院時バリアンスは8件発生し、手術直後からのリハビリテーションに関する提案がなされた。センチネル方式では4項目のクリティカルインディケーターに対して23件のバリアンスが発生し、患者状態に応じたパスの作成、手術直後からのリハビリテーションの強化、痛みに関する観察とアウトカムの追加が提案された。ゲートウェイ方式では92項目の日々のアウトカムに対して243件のバリアンスが発生し、センチネル方式に対する上乗せ分として、手術後合併症の早期発見に関して検討された。オールバリアンス方式では1,495件のバリアンスが発生し、骨粗鬆症治療薬の追加、持参薬中止・再開の確認、手術後SpO2 測定回数の増加、退院時診療情報提供書要不要の確認が提案された。発生要因は、ゲートウェイ方式では98.8%が患者・家族要因であったが、オールバリアンス方式では77.4%であった。バリアンス件数・改善策の特徴は、過去の報告どおりであった。

    結論:バリアンス分析にかかる労力は、バリアンス件数だけでなく、分析手法によって異なってくる。バリアンス分析に注ぎ込める労力と、提案される改善策の及ぶ範囲を考慮して、バリアンス収集方法を選ぶことをお勧めする。

特集(第16回学術集会)
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