日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
研究報告
患者と連携医へのアンケート調査に基づいた前立腺がん地域連携パスシステムの改善に関する考察
竹澤 豊澤田 逹宏藤塚 雄司牧野 武朗悦永 徹齋藤 佳隆小林 幹男
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2020 年 22 巻 2 号 p. 77-84

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抄録

 地域連携パスを作成し、地域の医療機関と前立腺がん根治治療後の経過観察を行ってきた。患者と連携医の地域連携パスへの評価を明らかにして、地域連携パスシステムを改善するためアンケート調査を行った。連携パスによる経過観察を開始し1年以上経過した患者378名と連携医184施設を対象とした。患者322例、連携医108施設より回答を得た。患者の連携パス評価は、満足(61%)、どちらともいえない(34%)、不満(5%)であった。患者の63%が併存疾患を有していたが、連携医で治療を受けているのはその48%であった。地域連携の利点として、通院時間の減少、外来待ち時間の減少、他の疾患の治療可能などがあげられた。経過観察も当院で行うべき、非専門医は不安などが問題点として指摘された。連携医の86%が非泌尿器科専門医だったが、91%が連携は問題ないと回答した。がん治療連携指導料の算定は58%の施設にとどまった。患者と連携医の大半が1年サイクルの循環型地域連携を支持した。先行研究に比べ、患者の満足度がやや低かった。併存疾患を連携医以外で治療している患者が多いこと、拠点病院へのこだわりと非専門医に対する不安、パスの対象が根治治療後の経過観察に限られていることに起因すると考えた。連携医選択法の再考、患者の不安を軽減できる診療、内分泌治療を含めたパス対象の拡大と、連携医におけるがん治療連携指導料算定の向上が今後の課題である。

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