2007 年 9 巻 2 号 p. 217-219
医療にはサイエンスとアートの両面が必要であるが、形式知、暗黙知がそれぞれ該当している。医療の標準化を困難にしているのはその暗黙知の存在であろう。EBMの時代にあってサイエンスの側面は非常に進んだといえるが、暗黙知に関わるアートの側面は忘れられつつある。医学イコールサイエンスと捉えられ、医療の全てが形式知化、パス化できるとの誤解も見受けられる。では、危機的状況にある暗黙知やアートの世界を我々はどのようにして認識し、獲得することができるのであろうか? それは徹底した形式知との格闘、すなわちパスの取り組みによって可能になると主張したい。パスの取り組みは形式知を駆使する知的作業であるが、この過程を経なければ暗黙知やアートの世界へは到達できないのである。