日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
9 巻, 2 号
日本クリニカルパス学会誌 第9巻 第2号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
原著
  • 三井 一浩, 並木 健二, 松本 宏, 今野 文博, 小ヵ口 恭介, 海野 賢司, 加藤 洋子, 戸崎 かをり, 氏家 智恵美, 吉永 智恵 ...
    原稿種別: 原著
    2007 年 9 巻 2 号 p. 119-127
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     当科では、1998年より大腸癌に対し腹腔鏡下手術を導入し、2002年より腹腔鏡下結腸切除術にクリニカルパスを導入した。また2003年4月よりパスの改訂を施行し、現在に至っている。パス導入前後並びにパス改訂により改善された項目の有無について検討し、クリニカルパス導入の効果を検証した。

    【対象と方法】 対象は、1998年8月から2005年12月まで1に当院で腹腔鏡下結腸切除術を施行した結腸癌症例78例のうち、術前イレウスと透析導入中の2例を除く76例を対象とし、このうち、術後合併症により退院が遅延(パス群ではパス逸脱に至るようなバリアンス)となった9例を除く67例について検討した。パス導入前の2001年12月までに手術をした11例をN群、パス導入から2003年3月までの10例をP-1群、パス改訂後から2005年12月までの46例をP-2群として、周術期の因子について検討した。パス日程は、手術2日前入院、術後第7病日退院の全行程10日間で施行した。

    【結果】 パスの導入、改訂により飲水開始病日はN群第3病日、P-1群第2病日、P-2群第1病日となり、食事開始病日は、各群でそれぞれ第4病日、第3病日、第2病日といずれも有意に早期となった。これに伴い退院病日は、N群第10病日、P-1群第8病日、P-2群第7病日まで短縮が可能であった。また、パス逸脱に至るようなバリアンスの発生に関しては、手技の安定とパスの改訂に伴い減少した。

    【結論】 腹腔鏡下結腸切除術にクリ二二ルパスを導入した結果、周術期管理の改訂ができ、入院期間の短縮が可能であった。また、パス導入後のバリアンス分析をもとにしたパス改訂により、さらにバリアンスの減少が計られ、パスの標準化が可能となった。

実践報告
  • 中村 廣繁
    原稿種別: 実践報告
    2007 年 9 巻 2 号 p. 131-134
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     平成18年度のDPC改定に伴い、あらたに改正した肺癌手術に対するクリニカルパスの運用効果を改正前と比較検討した。対象は平成17年1月から平成18年7月までに原発性肺癌に対して肺葉切除パスでDPC評価した86例を対象とし、旧パス使用群73例と新パス使用群13例に群別した。設定は旧パス、新パスでそれぞれ抗生剤使用日数は2日、1日、ドレーン留置期間は3日、3日、在院日数は21日、16日とした。両群間で、総診療報酬、一日あたりの診療単価、ドレーン抜去日、在院日数、バリアンスの比較解析を行った。結果は改正パスでは旧パス群と比較して、その設定とおりに、抗生剤使用期間、在院日数が有意に短縮した。また、在院日数に対するバリアンスも減少し、特に退院基準は満たしたにもかかわらず、退院遅延となる患者要因の割合が減少した。診療報酬は改正パスでは総診療報酬が減少傾向で、一日あたりの診療単価は有意に増加した。DPCの改定に伴う改正パスの運用は現在のところまだ少数解析であるものの、在院日数は大幅に短縮し、バリアンスも減少している。これはパス改正と同時に在院日数短縮に向けてのIC強化や創治癒を良好にするためドレーンの材質を交換しことが効を奏していると考えられる。今後は在院日数短縮後の問題点や改定DPC自体の問題点も併せて検討していく必要がある。

  • 野口 康男, 佛坂 俊輔, 前 隆男, 江頭 惠美子, 長尾 照子, 古賀 ひとみ, 重富 順子, 橋本 広子, 松本 尚子
    原稿種別: 実践報告
    2007 年 9 巻 2 号 p. 135-141
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     いわゆる大腿骨頚部骨折(大腿骨近位部骨折)の地域連携診療計画加算が平成18年度の診療報酬改定で新設されたのを契機に、佐賀整形外科地域連携ネットワークで地域連携クリニカルパス(以下、連携パスと略す)の検討を行い、18年4月より連携パスの運用を開始した。当院の連携パスの特徴は、明確な適応基準・転院および退院基準、在宅または施設も含めた記載、日程の大まかな区切り、達成目標の詳細な設定などである。また、連携医療機関間の情報共有と医療への積極的患者参加を目指して、患者用パスに加えて日誌欄やサマリーの写しなどを綴じ込んだ連携用ノート「私のカルテ」を作成して患者渡しとし、連携パスと同時に運用を開始した。当院にて大腿骨近位部骨折の手術を受け、10月までの7ヶ月間に退院した例(死亡退院を除く)は48名であり、そのうち17名に連携パスが適用されており、連携パス適用率は37%であった。当院の平均在院日数は連携パス運用前より若干長くなっていた。転院先まで含めた総入院期間は、連携パス適用例が非適用例より短かった。今後は、さまざまな利点をもつ連携パスをより多くの患者に適用できるように連携先を増やして行くこと、現在のまだ発展途上の連携パスを定期的会合で継続的に検討してよりよいパスに改訂していくこと、全入院期間や退院時の下肢機能評価などのデータを蓄積していき連携パスの効果を判定していくことなどが課題と考えている。

  • 熊谷 範之, 藤本 友士, 熊谷 和子, 熊谷 質子, 小山田 尚, 菅野 千治
    原稿種別: 実践報告
    2007 年 9 巻 2 号 p. 143-149
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     岩手県立大船渡病院(以下、当院)における外来がん化学療法は、ここ数年の間に、入院で行われていたがん化学療法が外来治療へとシフトされ、さらに紹介等による外来での導入件数も増加し、現在では主に5つの診療科で月約80件行われている。きめ細かい安全管理を必要とするがん化学療法を実施して行く上で、当院のような県立病院では、医師も含め県立病院間での定期人事異動や配置転換があり、さらに応援医師における診療の多様化もみられるため、種々のリスクをかかえた形で施行されている。さらに当院のオーダリングシステムは、一部が電子化されているのみであるため、情報の共有化等も問題に挙げられていた。

     そのような状況下で、安全ながん化学療法、および良質な医療の提供を目的に癌化学療法委員会を立ち上げ、がん化学療法システムの構築に取り組んだ。その主な取り組み内容は、「がん化学療法マニュアルの整備」、「レジメンの登録」、「スタッフへのイントラネット上でのレジメン等の公開」、「予約管理」、「データベースソフトを用いた情報の共有化」、および「患者情報等が印字できるようにクリニカルパスとデータベースソフトとの連動」である。

     今回、このようにがん化学療法システムを構築することによって、がん化学療法における多職種間における情報の共有化を行うことができ、それと同時に安全対策の向上に結びつけることができた。

  • 山野 朋江, 川村 研二, 相原 衣江, 井上 由紀子, 坂本 妙子, 殿田 幸江, 田渕 順子, 清水 由美子, 山下 よし, 森田 展代 ...
    原稿種別: 実践報告
    2007 年 9 巻 2 号 p. 151-156
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】前立腺生検における患者説明用のビデオを作成し、ビデオ説明の効果をアンケート調査したので報告する。

    【対象と方法】前立腺生検を施行した185例を対象とした。生検は、一泊二日で行い、経直腸的超音波下に生検を行った。ビデオはクリニカルパスに沿って作成し、その内容は、前立腺の解剖、実際に組織を採取する様子、合併症の判断基準等を含めた。

    【結果】アンケート回収率は、185例中116例(62.7%)であった。116例中108例(93.1%)がビデオの内容がわかりやすかったと回答した。患者本人は116例中66例(56.9%)がビデオを見て安心できたと答えたが、116例中8例(6.9%)はかえって不安になったと答えた。家族は、91例中57例(62.6%)がビデオを見て安心できたと答えたが、91例中7例(7.7%)はかえって不安になったと答えた。

    【結論】ビデオにより視聴覚から検査に対する理解を深めてもらうことが可能であったが、ビデオ視聴後も一部の患者と家族は、検査に対する不安を持っており、これらの不安を解消するためには、患者個々における追加説明が必要と考えた。

  • ―効果、問題点、課題について―
    藤原 久也, 香川 直樹, 伊藤 圭子, 大島 知代子, 石田 榮子, 北垣 和枝, 迫田 順子, 村上 久, 藤上 良寛, 桑原 正雄, ...
    原稿種別: 実践報告
    2007 年 9 巻 2 号 p. 157-160
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     クリニカルパスワーキンググループ(CPWG)の活動内容、成果、課題を明らかにするために、パスの様式の変化、承認パス数、院内の評価、CPWG構成員の活動への参加状況について検討した。1.パスは、活動開始時には不統一であり、院内全体の統一形式を定めオーバービューパスを作成した。次に、適応および除外基準、判断基準を規定し、アウトカム志向のオーバービューおよび日めくり式パスの統一形式に変更した。2.院内パス大会を8回開催し、パスの審査・承認作業や説明会など計78回の活動を行った。3.パス運用マニュアルを全面改訂した。4.51種類のパス(産科婦人科19,NICU7,ICU6,外科5,内科4,精神科3,眼科3,胸部外科2,整形外科1,小児科1)を審査、承認した。5.病院の発展や活性化などに最も大きく寄与した部門(診療科、病棟、委員会など)に対して県立広島病院OB会賞が授与されることとなり第1回OB会賞を受賞した。6.委員会活動専用の部屋の確保、パソコンなどIT機器の整備を行った。7.定期的なCPWG活動の出席者は構成員18人中10人(55%)に過ぎず、4人(22%)は全欠席であった。パスの理解を深め、浸透・普及させるために、CPWG活動を地道に定期的に継続することが重要で、機能強化にはCPWGの機構や人員構成の検討が必要と考えられた。

  • 治療説明用冊子の導入効果とオールインワンパスの採用
    田村 茂行, 三木 宏文, 於保 千恵子, 久下 景子
    原稿種別: 実践報告
    2007 年 9 巻 2 号 p. 161-168
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     医療従事者と患者の理解と満足の得られるパス運用をめざして、胃癌治療の説明用冊子(以下冊子)と幽門側切除術のオールインワンパスを導入したので、その効果について報告する。【方法】2003年9月に胃癌治療ガイドラインやパス、術後食事指導を掲載した冊子を作成した。この冊子を用いて外来で病状の説明とともに術後の経過についても十分説明した。冊子導入前の30例と導入後の46例の術後在院日数を比較検討した。また2004年症例71例の退院遅延の原因について調べ、その結果をもとに幽門側胃切除術のオールインワンパスを作成した。【結果】冊子の導入により、術後在院日数14日のパスで10%に認められていた患者希望による退院遅延は減少し、逆に43%で早期退院となった。2004年の71例では術後平均在院日数は13.9日で、64.8%の症例で術後12日までに退院していた。オールインワンパスでは術後10~12日で退院としたが、パスを使用した33例の平均は11.7日であった。また、看護記録時間はオールインワンパスの導入により短縮された。【結論】外来での冊子を用いた十分なインフォームドコンセントとオールインワンパスの導入により、効率的なパス運用が可能となった。

学会報告(第7回学術集会)シンポジウム1 本音で語る電子カルテ
  • 井川 澄人
    原稿種別: 学会報告(第7回学術集会)シンポジウム1 本音で語る電子カルテ
    2007 年 9 巻 2 号 p. 171-172
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     電子カルテの医療機関への導入は確実に増加しているが、導入に際しては導入目的を職員全体が理解し、病院全体の業務改革と患者満足度を向上させる工夫が重要である。また、ツールであるとの認識を持ち基本的運用を協議することが大事である。画像系システムは、数年後のサーバ更新を念頭に置いた運用も考慮に入れて構築計画するほうが良いと考える。さらに、情報漏えいに対する不安を解消するために、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を参考にする必要もある。

     医療情報システムの活用に向けたIT新改革戦略が進行していく中で、今後電子カルテは、組織横断的活動への貢献や経営・診療支援機能を持ち、入力された種々のデータを解析、病院運営への手助けをすることが求められている。

  • 石田 陽一
    原稿種別: 学会報告(第7回学術集会)シンポジウム1 本音で語る電子カルテ
    2007 年 9 巻 2 号 p. 173-175
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     当院で2006年1月1日より入院外来同時に電子カルテを導入したので、地方都市の自治体病院で業者選定から1年3ヶ月で電子カルテを稼動できた経験の一部を述べる。

     2004年4月に電子カルテ導入委員会を立ち上げ、電子カルテ導入目的を定めた。その後、ベンダー5社によるプロポーザル方式で富士通製パッケージ型電子カルテ“Neo-Chart”に決定した。医療情報システムの専門家がおらず、コンサルタントも入れなかったため電子カルテ構築の手順についてはベンダーの推奨に従った。

     ワーキンググループ(WG)による基本設計と詳細設計の2段階を経てシステム構築が行われた。Neo-Chartはカスタマイズを前提としたシステムであるが、システムの基本設計に関わるカスタマイズはしないことを原則とした。基本設計終了後の各種マスター作成が遅れて操作訓練や運用リハーサル時に当院仕様のインターフェイスが完成していなかった。稼動時点では準備不足が否めず不具合や要望事項はのべ1,000件を越したが、約半年の経過で大部分は対処できた。改修要望への対応を見送るか否かは電子カルテ導入目的を大原則として判断した。

  • ~副院長・産婦人科医・超音波指導医・医療安全推進室長・前パス委員長・前診療録管理委員長からみた疑問点・問題点
    赤松 信雄
    原稿種別: 学会報告(第7回学術集会)シンポジウム1 本音で語る電子カルテ
    2007 年 9 巻 2 号 p. 177-179
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     導入後5年を経過したオーダーリングシステムから電子カルテ等のシステムを導入するため電子カルテ導入等プロジェクトチームを発足させ、親委員会、13のワーキンググループで検討を重ねてきた。電子カルテはパーケージソフトを導入、画像記録をできるだけ取り込みシームレスにみる、所見記載・チェック体制で出来事(インシデント・アクシデント)を減少させることとした。次期電子カルテ等のシステム提案を依頼、提案説明会、デモ、導入病院見学、優先交渉業者選定、機能確定をした。契約予定メーカーのシステムでないものとしては、PACS、手術室・ICU・NICUシステム、内視鏡画像システム、薬剤部・用度課、心電図・肺機能、病理検査、リハビリのシステムが選定された。1年以内の導入に向けて準備に入るところである。5年間のメンテ料を含む導入時の費用と保険改訂や追加購入装置の接続費用、サーバーの拡張などで、5年間平均では病院事業収益の2.5%が必要である。

学会報告(第7回学術集会)シンポジウム3 専門領域薬剤師制度とクリニカルパス
  • 一円滑な治験実施のための工夫一
    松久 哲章
    原稿種別: 会報告(第7回学術集会)シンポジウム3 専門領域薬剤師制度とクリニカルパス
    2007 年 9 巻 2 号 p. 181-183
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     本邦では平成17年度より専門薬剤師の認定制度が開始された。その主旨は医療技術の進歩に伴って良質な医療を提供するため、高度な知識・技術において専門性を有した臨床薬剤師の養成にある。第7回日本クリニカルパス学会学術集会シンポジウムでは、幾つかの専門分野からの実務紹介と個々の討論が行われた。本旨については、がん専門薬剤師として治験の領域にて円滑な業務を実施するためのクリニカルパス導入の紹介である。導入目的は治験実施計画書からの逸脱を防止して、円滑かつ質の高い治験を実施することでデータの信頼性を保証することにあった。クリニカルパスの導入が院内関係者にとって治験薬の特性、必須業務や検査の意義等を理解するための有用な情報共有の手段となり、チーム医療の実践にも大きく貢献できたと考える。

学会報告(第7回学術集会)シンポジウム4 クリニカルパスと記録
  • ~プロセス分析の視点から~
    久保田 聰美
    原稿種別: 学会報告(第7回学術集会)シンポジウム4 クリニカルパスと記録
    2007 年 9 巻 2 号 p. 185-187
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     急性期病院における記録は日頃の患者の治療やケアだけでなく、刻々と変化する制度や新しいシステムに対応するための書類の占める割合も大きい。本来患者の治療やケアの計画や実施の記録であったクリニカルパス(以下パス)が、そうした問題にも対応できる機能をもたなければ記録の効率化は望めないのが現状である。近森病院でも、チーム医療を推進し、医療の質の向上を目指すパスやNST、ICTに代表される数多くの委員会活動と同時に医療機能評価、地域医療支援病院、急性期特定病院そして2006年4月からはDPC導入と常に時代の変化に対応し続けてきた。しかし、その度に増え続ける書類は2006年10月より稼動した電子カルテシステムによっても解決できず、依然紙と電子記録の混在が続いている。そこで今回は、そうした混沌とした現状を整理し、記録の効率化の為の視点を得るために、プロセス分析を用いて記録の問題が発生しやすい入院および急変場面の分析を行った。

学会報告(第7回学術集会)シンポジウム5 DPCデータを病院運営に活用する
  • 中村 廣繁
    原稿種別: 学会報告(第7回学術集会)シンポジウム5 DPCデータを病院運営に活用する
    2007 年 9 巻 2 号 p. 189-192
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     DPCデータの推移、特に疾患別の入院期間ll未満の比率を解析することで、自院の医療水準を考え、いかに病院経営改善のために活用できるかを検討した。対象は平成15年4月から平成18年3月までに当院を退院した患者。方法は1)DPC入院期間II未満の年次別推移を解析、2)平成17年度のデータを平成18年度の改定DPCに変換して解析、3)全国42国立大学病院の入院日数、入院単価、新入院患者比率をベンチマーク解析、4)DPC入院期間H未満を疾患別、診療科別にその推移を解析した。結果は1)DPC入院期間II未満は平成15年度から平成17年度の2年間1で6.4%増加、在院日数は7.2日短縮した。手術の有無別では入院期間II未満の比率1%増加あたりの診療単価は手術なしの方が高かった。2)平成17年度のデータを改定DPCに変換すると、入院期間ll未満は約10%減少した。3)全国42国立大学病院のベンチマーク解析では入院日数、診療単価、新患比率において最高の改善率を示した。4)疾患別に入院期間II未満を解析すると増加傾向、著変なし、減少傾向の3群に群別でき、さらに、高率か低率かで検討できた。退院患者数上位20疾患のうち減少傾向を2疾患、低率で著変なしを5疾患に認め、これらはクリニカルパスの見直しを含め早急の対策を要した。入院期間II未満の推移は診療科較差が明らかにあり、この是正が今後の重要課題と考えられた。DPCデータの推移を解析することは、自院の医療水準を把握でき、病院経営改善のために活用できる。

学会報告(第7回学術集会)シンポジウム6 地域連携パスヘの取り組み
  • 飯田 さよみ, 嶺尾 郁夫
    原稿種別: 会報告(第7回学術集会)シンポジウム6 地域連携パスへの取り組み
    2007 年 9 巻 2 号 p. 193-197
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     泉大津市立病院では地域医療連携室を窓口として開業医院との医療連携を推進し、各々役割分担をして共に地域住民の健診・診療にあたっている。生活習慣病である2型糖尿病に対して、良好な血糖コントロールおよび糖尿病合併症発症・進展防止を共通アウトカムとし、共通の治療認識をもって切れ目のない地域完結型医療を遂行する。そのツールとして糖尿病地域連携パス導入を試みている。糖尿病医療チームで糖尿病地域連携パス案をつくり、院内クリニカルパス推進委員会で討議した。平行して医師会の先生方と医師会総会、病診連携懇話会等の既成の会を活用して討議し連携パスの修正を行った。連携パスには市立病院での栄養指導、糖尿病教室への参加を項目として組み込んである。運用にあたっては評価をし、1年ごとの改定を予定している。今後、連携パスを活用して患者が信頼できる糖尿病医療を地域ぐるみで推進していきたい。

  • (例:糖尿病地域連携パス)
    下村 裕見子, 齋藤 登, 上塚 芳郎, 加藤 多津子, 岩本 安彦
    原稿種別: 学会報告(第7回学術集会)シンポジウム6 地域連携パスへの取り組み
    2007 年 9 巻 2 号 p. 199-206
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     2006年4月『地域連携パス』が診療報酬として評価された。本年は大腿骨頸部骨折のみであったが、第5次医療法改正の通過を受けて、対象疾患拡大が予想されている。『地域連携パス』は連携ツールならびに連携評価シートとして期待が大きい。今後、地域連携室には地域連携パス協議会の事務局としての業務が新たに加わることになろう。地域連携室(事務職)がファシリテーター(調整役)として、臨床の内容まで踏み込んだ活動をすることは、患者の視点を盛り込むなど有用であると考える。

  • 宮崎 美子
    原稿種別: 実践報告
    2007 年 9 巻 2 号 p. 207-212
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     薬剤師の患者への関わりは、医薬分業の中で、病院内外とその機能を大きく2分化している。薬薬連携とはこれら病院内の薬局と保険薬局との連携である。その必要性は、医薬品適正使用の推進、調剤事故の未然防止、すなわち薬物治療上の有効性と安全確保に集約される。薬物治療は医療の中心であり、関わる薬剤師の役割は重要なものである。

     入院中の薬物療法上の問題点を保険薬局へ適切に情報提供すること、すなわち病院薬剤師と薬局薬剤師の連携のもとに薬物療法における具体的な「患者情報の共有」を行うことにより、入院中および退院時の指導が活かされ、外来治療においても継続的に指導を行うことが可能となる。継続的な指導は服薬コンプライアンスの維持、安定した治療効果の維持につながる。薬薬連携推進についてはさまざまな試みが行われているが、お薬手帳、情報提供書等、紙媒体での情報の共有化が中心である。クリニカルパスを薬薬連携でも活用できれば、さらに安全でQualityの高い医療の提供につながるものと考え、当院では化学療法を受けている患者について、病院内外での情報提供に「薬物治療連携パス」を活用する試みを行っている。本シンポジウムでは薬物治療に関わる患者および他職種への強力なサポーターとしての薬剤師の役割を地域連携の中でどう考えていくかについて、現状から今後の課題も含めて検討・提案したい。

学会報告(第7回学術集会)シンポジウム7 NSTとクリニカルパス
  • 急性期病院の事例
    飯島 正平, 仲下 知佐子, 篠木 敬二, 正木 克美, 見戸 沙織, 渡辺 益美, 吉川 宣輝
    原稿種別: 学会報告(第7回学術集会)シンポジウム7 NSTとクリニカルパス
    2007 年 9 巻 2 号 p. 213-215
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     NSTのあり方・現状を踏まえて、NSTとクリニカルパスについて紹介する。今や栄養管理実施加算時代となり、こと急性期病院ではNSTの必要性が認められてきた。しかし、急性期病院では、その病院の担っている機能からNST以外にも求められることは多く、NSTの活動の効率性が課題となっている。NSTはあくまでもサポートであり、管理の主体は主治医・病棟である。また、NSTでは各職種は、自分たちが「可能な活動」ではなく、患者の視点にたった「必要なこと」を担っていただきたい。当院では、スクリーニング・回診を活動の中心に据え、常に栄養管理を意識する環境と管理ができる環境づくりを行ってきた。急性期病院NSTでは、クリニカルパスに最善の栄養療法を組み込み、適用症例のバリアンス発生を早期から看視して、バリアンスにさせない栄養管理に介入していくべきではないだろうか。

学会報告(第7回学術集会)ワークショップ3 医療の標準化に向けて(内科編)
  • 秋山 和宏
    原稿種別: 学会報告(第7回学術集会)ワークショップ3医療の標準化に向けて(内科編)
    2007 年 9 巻 2 号 p. 217-219
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     医療にはサイエンスとアートの両面が必要であるが、形式知、暗黙知がそれぞれ該当している。医療の標準化を困難にしているのはその暗黙知の存在であろう。EBMの時代にあってサイエンスの側面は非常に進んだといえるが、暗黙知に関わるアートの側面は忘れられつつある。医学イコールサイエンスと捉えられ、医療の全てが形式知化、パス化できるとの誤解も見受けられる。では、危機的状況にある暗黙知やアートの世界を我々はどのようにして認識し、獲得することができるのであろうか? それは徹底した形式知との格闘、すなわちパスの取り組みによって可能になると主張したい。パスの取り組みは形式知を駆使する知的作業であるが、この過程を経なければ暗黙知やアートの世界へは到達できないのである。

  • 石田 直
    原稿種別: 学会報告(第7回学術集会)ワークショップ3 医療の標準化に向けて(内科編)
    2007 年 9 巻 2 号 p. 221-223
    発行日: 2007/05/31
    公開日: 2023/03/30
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