2007 年 9 巻 4 号 p. 685-691
【目的】平成18年診療報酬改定において、透析患者の主要な合併症のひとつである「腎性貧血」の治療目的で用いられるエリスロポエチン製剤が包括評価の対象となり、医療機関での投与量の減少から患者への悪影響が懸念された。そこで、腎性貧血の管理を目的とする維持透析「疾患管理パス」(以下、パス)を活用し、患者の貧血悪化の防止や医療従事者に与える影響について検討を行った。
【対象と方法】平成17年3月から平成18年10月までに、単一の透析施設で維持透析を行っていた患者のうち、パス導入前後の2時点の血液データ(Hb、Ht、TSAT)および、エリスロポエチン製剤、静注鉄剤の投与量が把握できた209名を対象とした。さらに、パスに携わった看護獅に対し、パスに対する認識や導入の効果について導入前後でアンケート調査を行った。
【結果】静注鉄剤の投与量およびTSATは上昇し、エリスロポエチン製剤の投与量は有意に減少した(p<0.001)。Htの平均値は適正値の目標レンジ中央値である31.0%に近付くよい傾向がみられた。看護師に対する調査では、医師の治療状況や指示内容を把握しやすくなったほか、医師への確認事項が減少した(p<0.01)。
【結論】パスの活用により静注鉄剤が適正に投与され、腎性貧血の状態を安定させたままエリスロポエチン製剤の投与量を適正化することが可能であった。看護師に対しても教育的効果がみられた。