2006 年 31 巻 p. 7-21
「生活安全条例」は,現在では,多くの都道府県ないしは市町村で制定されており,また,この種の条例制定の促進は,政府の政策でもある.「生活安全条例」は内容面から次のように分類できる.すなわち,(1)地域の生活安全活動の理念を提示するもの,(2)学校,道路,公園,集合住宅等の設計において防犯の観点による行政や警察の積極的関与を規定するとともに,暴力犯罪や侵入窃盗などの前段階の行為を処罰するもの,(3)生活安全と生活環境の美化を融合させたもの,である.このような条例制定の狙いは,地域住民の防犯活動への積極的関与を促し,地域社会の犯罪抑止機能を回復することにある.条例は,地域住民の防犯に関する具体的なニーズに基づき,地域住民の主体性を前提とした民主的なプロセスを通して制定,展開されなければ,実効性を持ち得ない.そして,「生活安全条例」を機軸とした自主防犯活動には,住民自身による権力的な視点からの自己監視というリスクが潜んでいる.このようなリスクは,遍在性を有しており,またその存在に気づきにくいという意味で「リスク社会」に特徴的なものと考えられる.