犯罪社会学研究
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課題研究
  • ─エイジェンシー─
    上田 光明, Mitsuaki Ueda
    2023 年 48 巻 p. 4-7
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル フリー
  • ─決定論と自由意志をめぐる哲学論争の概観とその現代犯罪研究との接続の試み─
    木島 泰三, Taizo Kijima
    2023 年 48 巻 p. 8-22
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル フリー

     哲学において「決定論(determinism)」とは,通常,この宇宙の経過が唯一でしかありえないという宇宙論的な仮定を指し,この仮定と人間の自由意志との関わりで,論者たちは「非両立論」に属する「ハード決定論」と「(哲学的)リバタリアニズム」,および「両立論」に属する「ソフト決定論」に分かれて争ってきた.一方,社会科学で話題となる「決定論」の中には,「生物学的決定論」や「環境決定論」など,宇宙論的仮定というよりも人間本性に関する仮定も多い.本稿は,これらの「様々な決定論」全体を大きな枠組みの中で整理することを1つの課題とする.このような整理を踏まえた上で本稿後半ではいくつかの現代犯罪研究との関連で決定論とエイジェンシーの問題を考える.マッツァについてはその「決定論」概念の分析,およびそれに関連して自由意志を確保する戦略の考察を,パターノスターに関してはそのリバタリアン的エイジェンシー概念の批判的考察を,マルナの質的研究については心理学者ウェグナーの意識的意志に関する理論に関連づけた考察を,それぞれ行う.

  • ─「ソフトな決定論」再訪─
    秋本 光陽, Koyo Akimoto
    2023 年 48 巻 p. 23-35
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル フリー

     本稿は社会学の観点から,古典的犯罪学理論と自由・エイジェンシー概念との関係性について考察するものである.近年離脱研究の文脈において,人間の自由・エイジェンシー概念や行為の目的論的説明を重視する立場と,行為の因果論的説明を重視する伝統的な実証主義・決定論的犯罪学との間で,対立的な議論が交わされている.自由・エイジェンシー概念の身分や所在について考察するために,本稿では主にこれらの議論の基礎を提供した,D・マッツァの理論と彼の「ソフトな決定論」と呼ばれる見解に焦点を当てる.考察を通じて,中和の技術や漂流といった独自の理論的なアイデアを尊重するためには「非行・犯罪行為を説明する活動」への関心を徹底させ,その関心のもとで,自由・エイジェンシー概念や行為の目的論的説明を捉え直す必要があることを論じる.

  • 渡辺 匠, Takumi Watanabe
    2023 年 48 巻 p. 36-46
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル フリー

    自由意志の問題は,哲学などの領域において長らく議論されてきた.(社会)心理学の領域でも,自由意志の問題が議論の対象となることがある.それはおそらく,心理学の研究は自由意志の存在を基本的に仮定しつつも,一部の研究結果や研究の背景にある考え方が自由意志の存在を否定しているように感じられるからである.本論文はこうした自由意志の問題に関連しうる心理学の研究や考え方を紹介したうえで,それらにより自由意志の存在は否定されるのか,またなぜ自由意志の存在が否定されると捉えられうるのかを考察する.さらに,自由意志(エイジェンシー)に関する問題は犯罪社会学(離脱研究)においても議論されており,本論文はそれぞれの領域における自由意志(エイジェンシー)に対する問題意識が少なくとも部分的に共通しているのではないかという可能性を提示する.

  • ─(刑)法学の視点から─
    中村 悠人, Yuto Nakamura
    2023 年 48 巻 p. 47-55
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル フリー

    本稿は,デジスタンスにおけるエイジェンシーの問題を,法学,特に刑法学の視点から検討を行うものである.デジスタンスの概念には多様なものが含まれるが,デジスタンスを巡る議論は,再犯防止や社会復帰において語られているものとの共通性がある.その中で,デジスタンスをリカバリーの文脈で用いる立場に目を向ける.これは,主体性に着目し,デジスタンスを長期的なプロセスであると捉えるものである.刑法学においても,主体性が,自由意志(意思)との関係で議論されてきた.哲学的議論と同様に,当初は自由意志の経験的証明を問題にしてきたが,その後,人間の行為が因果法則に従っていたとしても自由といえるのかが問われるようになった.非難にせよ功績にせよ,責任を問う上で,その行為が自由に行われたといえるかを問題にしている.自由と評価できるが故に責任を問い得ることになり,自由と評価できるが故に法規範に従った行動を要求できるわけである.デジスタンスにおいて当事者を行動統制の客体としてのみ捉えてしまうと,責任を問う上での主体性の意義に反し得る.この意味でも,デジスタンスにおいて主体性に着目する意義がある.

研究ノート
  • ─パンデミック初年の東京都についての検討─
    岡本 英生, 森 丈弓, 松川 杏寧, 山本 雅昭, Hideo Okamoto, Takemi Mori, Anna Matsukawa, ...
    2023 年 48 巻 p. 58-73
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル フリー

    COVID-19の規制により人の外出が抑制されたことで,路上犯罪,空き巣,乗り物盗などの犯罪が減少すると予想された.しかし,平常とは異なる状況に便乗した詐欺などの犯罪が増加することも考えられる.COVID-19の規制が犯罪の発生に与えた影響を明らかにすることは,パンデミック時の犯罪対策を考える上で重要であろう.本研究では,ARIMA モデルを活用して,パンデミック初年(2020年)の東京都における刑法犯の種類別の認知件数がどのような影響を受けたかを検討した.ほとんどの種類の犯罪で2020年の認知件数が減少していたか,あるいは減少も増加もしていなかった.ただし,詐欺については増加していた.本研究から,今回のパンデミックは多くの種類の犯罪の発生を抑制するかあるいはそれほど大きな影響を与えなかったが,詐欺については増加させていたことが示された.

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