犯罪社会学研究
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刑事司法と福祉の連携に関する現状と課題について (課題研究 刑事司法と福祉の連携の在り方-犯罪行為者の社会復帰支援の現状と課題)
長崎県地域生活定着センターの"実践"から見えてきたもの
伊豆丸 剛史
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2014 年 39 巻 p. 24-36

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抄録

長崎県地域生活定着支援センターでは,主たる業務である矯正施設を退所する障がい者・高齢者への福祉的支援だけではなく,捜査・公判段階にある障がい者・高齢者に対する福祉的支援にも積極的に取り組んできた.その理由は,ひとえに矯正施設退所者を支えるシステムだけではなく,矯正施設に至る前のより早い段階,即ち刑事司法手続上の捜査・公判段階から福祉的介入がなされるシステムも同時並行的に構築していかなければ,社会的弱者を犯罪へ至らしめる負の連鎖は,真の意味で断ち切ることができないのではないかと実感したからである.こうした問題意識から,長崎県地域生活定着支援センターでは,社会福祉法人南高愛隣会等と協働し,平成23年度から調査研究事業に基づく様々な司法と福祉のモデル的実践を積み重ねてきた.また,その一環として,平成25年度には定着支援センター内に「司法福祉支援センター」をモデル的に開設し,被疑者・被告人に特化した支援も実践してきた.本稿では,これらの取り組みから見えてきた捜査・公判段階からの障がい者・高齢者支援における成果や課題について述べるとともに,司法と福祉の狭間を紡いでいくために,これまで交わることのなかった様々な機関が互いを知り,深めあうことでの「イノベーション」の必要性を説く.

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© 2014 日本犯罪社会学会
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