犯罪社会学研究
Online ISSN : 2424-1695
Print ISSN : 0386-460X
ISSN-L : 0386-460X
犯罪被害者支援における「対等」な支援者-被害者関係の社会的構築
2次被害の概念を用いた被害者学者の活動に関する歴史的考察
岡村 逸郎
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 40 巻 p. 87-99

詳細
抄録

本稿の目的は,「対等」な支援者-被害者関係にもとづく犯罪被害者支援の言説が,犯罪被害者救済に従事してきた被害者学者によってなぜ形成されたのか明らかにすることである.分析の対象は,被害者学,刑事法学,ないし刑事政策を専門とする学者の論文・著書である.精神科医は,「専門家」が救済対象を選別することによって,救済者-被害者関係を「対等」でないものとして捉えることが,さらなる2次被害ひいては3次被害を被害者に与える加害行為だと批判した.2次被害の概念は,被害者学者がこれまでおこなってきた救済の活動を加害行為に反転させてしまうという意味で,かれらにとってネガティブな側面をもった.被害者学者は,このネガティブな側面が精神科医の対抗クレイムによって顕在化したために,「対等」な支援者-被害者関係にもとづく犯罪被害者支援の言説を形成した.

著者関連情報
© 2015 日本犯罪社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top