2018 年 43 巻 p. 72-86
本稿は、<変容の物語>の「揺らぎ」をめぐる少年と職員の営みから,更生保護施設の意義をナラティヴという形式から明らかにするのを目的とする.2014年11月から2016年4月まで,X 更生保護施設に入所する少年8名への継続的なインタビュー調査を実施した.少年の語りから⑴<変容の物語>は,矯正教育で高まった意欲が頓挫することで改訂に向かい,⑵その揺らぎに対して,施設職員が少年自身の持つ力やスキルに着目した「認証的聴衆」として働きかけを行っていた.また⑶問題を外在化することで、少年が問題を社会的文脈との関連で解釈可能になり,⑷社会生活を通した「格下げ」の経験が,語り手の葛藤や苦悩と共に,「再格付けの儀式」を経て文脈に位置付けられることがわかった. 少年の場合,困難や苦しみを伴ったまま、「以前よりは“まし”」と思える環境での更生/立ち直りを目指すのがほとんどである.社会生活の中で生じる「格下げの儀式」に対して,何度でも「再格付けの儀式」が作動するような物語的コミュニティが必要であり,更生保護施設は、その改訂を支える物語装置として役割を果たすことができる.