犯罪社会学研究
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社会変革のジレンマ
吉間 慎一郎
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2019 年 44 巻 p. 46-62

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抄録

筆者は,2017年に協働モデルを発表した.それは,罪を犯した人の立ち直りに寄り添う伴走者が自ら変わることによって,当事者との相互変容を起こすプロセスである.本稿では,支援モデルとしての協働モデルが社会変革モデルとしても機能するものであることを示す.社会的包摂への取組みは様々なところで行われているが,主流文化への同化としての社会的包摂は,それと同時に主流文化に適合できない者の排除をもたらす.したがって,支援者が,排他的な社会の状態を放置したまま主流文化への同一化によって社会的包摂を達成しようとしても,ますます当事者は社会からの排除を味わうことになる.このような支援におけるジレンマを乗り越えるためには,包摂する側と包摂される側という区別をやめ,相互変容的な社会の構築に取り組む必要がある.つまり,伴走者と当事者が協働関係に基づいて生み出した新たな解決策を,主流文化によって息詰まる社会の解決策として提示し,コミュニティ同士の協働関係を構築することによって,排他的な社会の変革と社会的包摂とを実現しようとするものである.協働モデルは,コミュニティの相互変容による社会変革を目指すプロジェクトである.

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© 2011 日本犯罪社会学会
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