犯罪社会学研究
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課題研究
様々な決定論
─決定論と自由意志をめぐる哲学論争の概観とその現代犯罪研究との接続の試み─
木島 泰三Taizo Kijima
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キーワード: 決定論, 自由意志, 離脱
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2023 年 48 巻 p. 8-22

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抄録

 哲学において「決定論(determinism)」とは,通常,この宇宙の経過が唯一でしかありえないという宇宙論的な仮定を指し,この仮定と人間の自由意志との関わりで,論者たちは「非両立論」に属する「ハード決定論」と「(哲学的)リバタリアニズム」,および「両立論」に属する「ソフト決定論」に分かれて争ってきた.一方,社会科学で話題となる「決定論」の中には,「生物学的決定論」や「環境決定論」など,宇宙論的仮定というよりも人間本性に関する仮定も多い.本稿は,これらの「様々な決定論」全体を大きな枠組みの中で整理することを1つの課題とする.このような整理を踏まえた上で本稿後半ではいくつかの現代犯罪研究との関連で決定論とエイジェンシーの問題を考える.マッツァについてはその「決定論」概念の分析,およびそれに関連して自由意志を確保する戦略の考察を,パターノスターに関してはそのリバタリアン的エイジェンシー概念の批判的考察を,マルナの質的研究については心理学者ウェグナーの意識的意志に関する理論に関連づけた考察を,それぞれ行う.

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© 日本犯罪社会学会
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