堺市重度障害者歯科診療所は主に日帰り全身麻酔法や静脈内鎮静法などの薬理学的アプローチ下で歯科治療を行う診療施設であり,認知症患者も受け入れている.今回,2008年4月から2014年3月に当診療所を受診した認知症患者の初診時の年齢別う蝕罹患状態,口腔衛生状態,行動調整法,転帰などについての実態調査を行った.
う蝕罹患状態を平成23年歯科疾患実態調査の同年齢と比較したところ,D歯数およびDF歯数は全年代で高い値を示したがDMF歯数は70歳以上ではほとんど差が認められなかった.以上のことからM歯数は70歳以上では低い値になると推測され,このことは当診療所を受診した認知症患者は通法下の歯科治療が困難であり,抜歯を含む歯科治療が未実施のままであることを意味している.また口腔衛生状態も不良の患者が多く,日々の口腔ケアが困難であることも予想される.行動調整法に関しては,当診療所を受診した認知症患者の82.9%に行動調整法として薬理学的アプローチを選択していた.転帰としては半数以上の患者が当診療所で治療終了後に紹介元に逆紹介されていない.この理由としては急性症状の対症療法のみが目的で来院した患者が存在していることや,紹介元へ逆紹介をしても対応困難なため十分な口腔衛生管理ができないことが考えられる.今後も超高齢社会の進展に伴い,基礎疾患を合併した認知症患者の増加も予想されることから,より安全面に配慮した全身管理および歯科診療を提供する必要があると思われる.