Down症候群(DS)者の口腔機能には,知的状況,構音機能,嚥下機能,解剖学的特徴などさまざまな要因が影響を与える.知的状況として200名余りのDS者の結果から,20~30歳では知能指数(IQ)が20~30程度(精神年齢が4~6歳)の者が多かった.DS者では成人期にも言語や口腔機能に関する課題を持続しているものの,ほとんどが小学校に就学する頃にハビリテーションが終了されていることが判明した.さらに,さまざまな口腔機能検査から,DS成人期における口腔機能は標準値と比較して低い傾向にあり,加齢とともにさらに低下することが明らかとなった.つまり,DS者では継続的なハビリテーションが必要であると考えられるが,リハビリテーションセンターなどでのハビリテーション/リハビリテーションは,限界があるという現状が明らかになった.
自宅などで簡単にハビリテーション様の効果が期待できるコンテンツを作成し,人工知能(AI)を用いて,能力的な現状を測る評価法の開発を目指している「パタカラプラス」は,現在のわが国の実情の改善に適していると考えられる.当初は誰でも手軽に「パタカラプラス」コンテンツを利用できるように,YouTubeにアップロードすることから始めたが,「毎日使用するには,DVDのようなものがあるほうがよい」との意見を多くいただき,コンテンツグループで新たにDVDを制作した.
「パタカラプラス」のトレーニングを6か月程度行い,実際に言語機能が改善するか,みさかえの園むつみの家の言語聴覚士が評価した.評価数が少なかったことが関係してか統計学的には有意差を見いだすことができなかったが,コンテンツでも力を入れている音節分解能力の向上が認められた例が多く(4/5),構音検査でも半数以上(5/9)で意義がある可能性が示唆された.さらに,小規模の支援学校分校で,「パタカラプラス」コンテンツ(DVD)のトレーニングをほぼ毎日,6か月間行ったところ,これもある程度の成果を収めた.
「パタカラプラス」のAIを用いた自動評価については,音声に関しては,使用できるウェブアプリケーションを開発した.現在はまだ,単音(パ・タ・カ・ラ)の明瞭性をチェックできる程度であるが,今後,文章などの明瞭性評価や身体機能の自動評価を目指す予定である.さらに,DS児者の言語・嚥下の状況をチェックし,得られた疾患特性を参考にしてアプリケーションの向上に努める予定である.
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