日本障害者歯科学会雑誌
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症例報告
静脈内鎮静法の応用が有効であった歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症の一症例
福田 謙一平山 明出川 博美谷村 久美子斉藤 浩司
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2021 年 42 巻 3 号 p. 276-280

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抄録

歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(以下DRPLA)は,脊髄小脳変性症に属し,ミオクローヌス,知的能力障害,運動失調,てんかん発作など,歯科治療中においては行動調整を含めた患者管理が必要である.私たちは,DRPLA患者の歯科治療において,静脈内鎮静法を応用し有効であった症例を経験したので,報告する.

症例は22歳,女性.下顎右側第二大臼歯の歯痛を主訴に来院した.16歳時に若年型DRPLAと診断され,20歳時には,会話ができなくなり,食事や着替えなどすべて介護が必要になった.下顎右側第二大臼歯の抜髄処置を行うため,通常治療にて浸潤麻酔を開始したところ,収縮期血圧が192mmHgに上昇し,心拍数も150拍/分と頻脈となり,ミオクローヌスも著しくなった.そこでミダゾラム(6mg+2mg)による精神鎮静法を応用して全身管理を行った.このときの回復が遅延したので,2回目以降プロポフォール(40mg初期投与,5mg/kg/hourの持続静注)に変更したところ,行動コントロールも良好で,回復も迅速であった.一度治療を終了した2年半後,再来院した.胃瘻と気管切開チューブの留置がされていた.診察の際,前回同様に血圧と心拍数が上昇し,ミオクローヌスも著しくなった.そこで,再度プロポフォールによる精神鎮静法にて,精神緩和と行動調整を行い,安全で適切な治療を遂行しえた.

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