摂食症,特に神経性やせ症にみられる体重減少性の「無月経」は,表現型のひとつの結果に過ぎず,病態の本質は低エストロゲン状態とそれに伴う健康課題である。とりわけ思春期の長期にわたる低栄養は,二次性徴としての身長・骨量の獲得を妨げ,骨成長の機会を逸すれば,不可逆的にその後の人生を左右しかねない。したがって女性医学の治療目標は,単なる「みかけ上の月経再開」ではなく,現在から未来へ続く心身の健康を支えることにある。
現行の指針では体重回復が最優先とされ,著しい低体重例では女性ホルモン補充療法(HRT)に慎重な姿勢が求められる。一方,ひとたび逸脱した摂食行動について,その正解を見失い,克服までに難渋・長期化することも少なくない。
本稿では女性医学の視座とWomen’s Bone Healthの観点から,摂食症におけるHRTの意義と工夫,さらに産婦人科医が果たし得る役割について文献的に考察する。