抄録
本研究は, 自然災害に対する土地の脆弱性に関して, 人為的な地形改変を空間的に明らかにするために, 土地利用変化に着目した. 最初に1/50,000旧版地形図から農用地, 森林, 市街地, 河川, 海浜, 海に区分する100mメッシュ土地利用データの作成手法を確立した. 次に福岡県域を対象にし, 地理情報システム(GIS)を用いて, 1900年以降の土地利用の変遷と地形・地質との空間分析を行った.
その結果, 次のことを明らかにした. (1)1900年は地形の起伏にあわせた土地利用であったが, 1950年以降は, その関係が大きく変化した. (2)深成岩類の土地での開発は1900年以前から各地で行われており, 1950年以降は開発が農用地から市街地へと変化した. (3)市街地と農用地の標高および傾斜角の変化は, 山地と市街地とが隣接する土地が1900年に比べ10倍程度増加したことを示した. (4)土地利用と地質の特徴から, 森林から変化した深成岩類の土地の地形には, 人為的インパクトとして, 地形の傾斜角で4~8°の変化が見積もられた.
これらの結果は, 本手法が人為的な地形改変の空間分布の把握に有効であることを示している.