応用地質
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論文
1968年十勝沖地震によって降下火砕物層に発生した崩壊と風化との関連について
吉田 昌弘千木良 雅弘
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2012 年 52 巻 6 号 p. 213-221

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抄録

 地震動を誘因として降下火砕物が分布する急傾斜地では, 崩壊が多数発生してきた. 本研究では, 地震によって発生する降下火砕物層の崩壊の地質的背景を明らかにするため, 1968年十勝沖地震により発生した崩壊を事例として, 青森県南東部に分布する降下火砕物の層序, 風化性状, 粘土鉱物, 物理・力学的性質, 透水性について崩壊の発生した地域と崩壊の発生しなかった地域で比較, 検討を行った. 本調査地域には十和田八戸テフラが分布し, このうち上部の黄褐色火山灰(ローム)と下部の軽石-火山灰互層の境界に位置する軽石混じり火山灰で崩壊のすべり面が形成されていた. 強熱減量試験, 10Åハロイサイト粘土鉱物含有率, 簡易貫入試験NC値はこの軽石混じり火山灰から上位にかけて変化が大きくなっており, 崩壊の発生にこのような変化の大きさが寄与していたと考えられる. 一方で崩壊の発生しなかった地域での強熱減量試験, 10Åハロイサイト粘土鉱物の含有率, 簡易貫入試験NC値はそれぞれ緩やかな変化を示していた. 崩壊の発生した地域での軽石混じり火山灰が低い透水係数を示したことから, ここで浸透水が妨げられ風化にギャップが生じたと考えられる.

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© 2012 一般社団法人 日本応用地質学会
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