抄録
急崖をなす露岩表面の凹凸が拡大すれば,オーバーハング部は不安定化し,岩盤崩落にいたる.この機構解明の一環として島根県忍原峡の砂岩急崖に発達するタフォニの形状特性を調査し,凹凸の拡大から岩盤崩落にいたる過程およびその支配要因を検討した.
タフォニが発達する当峡谷の急崖は粗粒のアレナイト砂岩を主体とする.凹部内壁の岩石は劣化・剥離が著しく,石膏の析出が頻繁に見られることから,その形成・拡大は塩類風化を介したものと考えられる.さらに,崖面に対して受け盤をなす礫岩薄層に多いことから,崖面流水の内部への浸透にはこの構造と高透水層の存在が関与したであろう.
タフォニ開口部の大半は横長の楕円であるが,楕円の高さ/横幅比は横幅の大きなものほど小さく,開口部が小さな縦長楕円から大きな横長楕円へ拡大したことを示している.奥行きの拡大によって上部のオーバーハングが顕著になるが,これは開口部の天井アーチ構造によって支持される.ただし,支持力は横長伸長に伴って低下するため,オーバーハング部は不安定化し,節理面も関与して崩落する.急崖直下に散在する巨大転石群はこれまで頻繁に崩落が発生してきたことを物語っている.