応用地質
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論文
電磁探査および地質・地下水調査による深部流体の移動経路の可視化
―山口県北東部徳佐盆地における適用―
西山 成哲田中 和広鈴木 浩一
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キーワード: 深部流体, 地質構造, CSAMT法
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2016 年 57 巻 3 号 p. 102-112

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抄録

わが国では,深部流体と呼ばれる高塩濃度の地下水が内陸部にも湧出することが知られており,スラブからの脱水流体との関連性が指摘されている.高塩濃度の深部流体は,地下構造物の健全性・耐久性に影響を及ぼすことが想定される.そのため,深部流体の湧出域では,その地下での分布や流動特性の解明が必要となる.山口県北東部から島根県南西部の地域においては,スラブ起源とされる有馬型熱水に対比される地下水の湧出が報告されている.本調査では,山口市徳佐盆地において地質・地下水調査,CSAMT法による電磁探査を実施した.その結果,深部流体は,基盤岩中を断層に沿って地表付近まで上昇し,表層部において未固結堆積物中に浸透し,未固結堆積物中を流出域となる河川に向かい流動していることが明らかとなった.深部流体は,調査地域では地表部へ自然湧出することなく,ボーリング掘削された箇所でのみ確認されている.従って,地表で深部流体が確認されていない地域においても,地下深部においては地質構造に規制された深部流体が存在する可能性があることが,本調査によって示された.地下構造物の立地選定や健全性・耐久性評価においては,深部流体の存在の有無について十分な検討が必要である.

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© 2016 一般社団法人 日本応用地質学会
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