応用地質
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論文
砂岩中のレンズ状空隙と地下水流動との関係
― 高知県土佐市における秩父累帯鳥巣層群の例 ―
須内 寿男 宮田 雄一郎田中 和広
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2020 年 61 巻 4 号 p. 170-182

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抄録

高知県土佐市谷地(やつじ)地区で,地表地質踏査,電磁探査(CSAMT法),オールコア・ボーリング,地下水検層などによって地下水源が見いだされた.ボーリングコアには,方解石脈の溶解によって形成されたとみられる特徴的なレンズ状空隙の密集がみられた.レンズ状空隙の多く見られるゾーンは,空隙率が高くP波速度の遅い部分と対応している.同時に地下水検層における比抵抗値の変化の大きいゾーンにも対応しており,地下水流動層の深度ともほぼ一致する.これらのことから,レンズ状空隙の多いゾーンは,透水性の高さにも寄与していると推測される.ボーリング地点付近にはNNW-SSE方向の急傾斜の断層や割れ目帯が推定される.ボーリング近傍に掘削された井戸(深度150m)の水および周辺の沢水の一般水質と酸素水素安定同位体比の分析結果より,レンズ状空隙は,1km程度南方の標高300m以上の流域から割れ目を通じて浸透した,方解石に不飽和な地下水によって形成されたと推定される.以上のことから,砂岩中のレンズ状空隙の密集帯は溶解ゾーンを示しており,地下水流動経路の指標として応用地質学上重要な地質要素の一つとなることが期待される.

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© 2020 一般社団法人 日本応用地質学会
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