2023 年 63 巻 6 号 p. 277-290
地すべり・崩壊発生箇所の予測において,広範囲,複数の箇所を一度に判断するのは難しい.近年,高精細なLiDAR(light-induced direction and ranging)データの日本国内の取得が進んでいる.このデータは,現在の地表面で検出できる過去の履歴の蓄積である.本研究は,地質,地形などの条件が比較的類似し一つのイベントで発生した2011年台風12号(アジア名Typhoon talas)で発生した38箇所の崩壊(崩壊発生),および隣接する63箇所の崩壊していない山体重力変形地形(崩壊非発生)を入力データとして,実際に深層崩壊が生じた箇所の教師データを作成し,深層学習を用いて山体重力変形を自動検出する方法を検討した.検出結果は,正解率0.856で,数値ツールを用いた深層崩壊発生箇所予測の有効性を示唆した.また,崩壊範囲外において崩壊判定が認められた箇所もある.これは,“崩壊する可能性のある箇所”として今後の崩壊発生の候補とすることができ,深層学習は将来的に深層崩壊発生箇所の予測を改善できるだろう.