2024 年 64 巻 6 号 p. 333-342
日本の傾斜地造成の歴史はその地域の産業構造や開発当時の経済動向と密接な関係が窺える.一方で,土地の貨幣的価値(地価)はその災害危険性を考慮しているであろうか.主に古典派経済学や不動産科学が検討してきた地代論研究は農業における土地の肥沃度の差異で地代を論じることもあった.現代に置き換えて考えれば,土地の価値を扱う「不動産鑑定評価基準」における不動産の「効用」について熟考する余地がある.個別の土地の物性評価や地域特性に関係する居住安全性や農地の収穫性といった価値を「効用」として考えた価値への反映や居住地の適地利用が改めて必要である.
現在のような社会環境において公共の安全を担保するためには,価値への再考と共に法規制による調整が重要である.