応用地質
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灰爪層の地すべりについて
岩永 伸
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1976 年 17 巻 4 号 p. 176-186

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抄録

(1) 灰爪層の分布地では他の新第三紀層に比較すると地すべりの発生頻度は少なく, 規模も小さい。背斜軸付近などには旧期の大規模な地すべり地形も存在するが, 魚沼層群分布地に比較すると数は少ない。
(2) 地層傾斜方向と地すべり方向とのなす角度差 (交角) と地すべり分布数との関係は, 角度差が大となるにつれて等比級数的に地すべり分布数は少なくなり, その関係はほぼ次式で表わすことができる。
x=473-231logy
ここに, y: 地すべり地塊の分布数
x: 地層傾斜方向と地すべり方向との角度差の10°ごとの階級値
(3) 上記の両者の関係は魚沼層群ほど顕著ではなく, 走向地すべり地塊が多い西山層と, 層すべりの多い魚沼層群との中間的な傾向を示す。
(4) 地層傾斜方向と地すべり方向との角度差と地すべり地塊の平均面積との関係はやや分散しており, 余り明瞭な傾向は見られない。一般的な傾向としては走向地すべりの面積は小さく, また, 背斜軸付近とくに軸直上の地すべり地塊の面積は大きい。
(5) 地層傾斜方向と地すべり方向との角度差が大きいほど地表傾斜は急で魚沼層群分布地と同じような傾向がみられる。
(6) 地すべり地塊の面積と地表傾斜との関係は逆相関で, 等比級数的に一方が大きく (小さく) なると一方に小さく (大きく) なる。この関係はほぼ次式で表わすことができる。
y=20.4-7.3logx
ここに, y: 地すべり地塊の平均地表傾斜
x: 地すべり地塊の面積ha
(7) 0.2~1.0haの小面積の地すべりが最も多く, 地表傾斜が10°~15°の場合が最も地すべりを生じやすい。

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