応用地質
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稲田花崗岩の初期マイクロクラック分布
長田 昌彦山辺 正吉中 龍之進
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1999 年 39 巻 6 号 p. 500-510

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抄録
稲田花崗岩内の初期マイクロクラック分布について, 岩石薄片からのクラック抽出結果を画像解析することにより検討した. その結果, 薄片レベルにおいてクラックの空間的な分布は非常に不均質であることが明らかとなった. すなわち, 平均粒径が2mmである主構成鉱物が集合して平均間隔5-10mmのクラスター状に分布しているため, 岩石内で主に石英内に密集して分布している比較的長いクラックの分布もクラスター状となる. 稲田花崗岩の石目はクラック方向分布の最頻値の大きさによって特徴づけることができる. rift面を形成するクラックは長いものが多く粒間クラックが発達するが, 方向分布の散布度は小さい. grain面を形成するクラックにも比較的長いものが多いが, rift面を形成するクラックよりは本数が少なく, 散布度が大きい. それらに比べてhardway面を形成するクラックは短く, 本数も少ない. 一方, 各面におけるクラック長さの頻度分布は, 方向によらずほぼ同様の傾向を示す. また, 長さ別の方向分布は計測限界によらず相似形となる. 石切場におけるgrain面の方向とクラックの方向分布とは10-20°ほど異なり, クラック分布という観点から見ると稲田花崗岩は完全な直交異方性材料ではないと考えられる. また, このようにクラック分布が石目の主軸からずれていることが, 三軸圧縮試験時の最終的な破断面形成に大きな役割を果たしていると考えられる.
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