応用地質
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風化花崗岩表層の緩みと斜面内部への降雨の浸透
物理探査と実測データを用いた検討
鈴木 浩一伊藤 栄紀千木良 雅弘
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2002 年 43 巻 5 号 p. 270-283

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抄録
風化花崗岩よりなる12年前に掘削された法面の降雨浸透挙動を調査するため, 電気探査法とTDR法によるモニタリングを行った. 法面下部の表層1mの領域は比抵抗変化が顕著に認められ, 降雨による湿潤と降雨後の乾燥の繰り返しが認められた. 法面上方の斜面では降雨による比抵抗変化は深部にまでおよび湿潤状態が継続していることが推定された. TDR法による体積含水率は, 法面下部の表層では降雨により10%から20%に増加し降雨後は速やかに減少した. 簡易貫入試験結果および採取試料の物理特性より, 法面下部の表面より約40cmの領域にある掘削前の風化程度の弱い花崗岩では, 掘削後に密度・貫入抵抗値は減少し間隙率は増加した. この要因として, 降雨による湿潤と乾燥の繰り返しおよび法面掘削による応力解放により表層部の割れ目が増加したと推定される. 一方, 法面中部で掘削前の風化程度の強いマサでは, 掘削後の物理特性の変化は明瞭には認められなかった. この緩み域の可視化を目的に弾性波探査屈折法を行い, 比抵抗・弾性波速度断面図を組み合わせて解析した飽和度・間隙率・体積含水率分布図は, TDR法および簡易貫入試験結果とほぼ整合した.
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© 日本応用地質学会
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